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「楽天の息の根を止める」意外な企業の正体。“楽天経済圏”を崩壊させる周到な戦略

PayPayに対してリソースを集中投下

 2021年10月に、Yahoo!ショッピングでのストア評価や商品レビューなどを基準に、ソフトバンクのYahoo株式会社(現在のLINEヤフー株式会社)が定める優良店のみが出店するショッピングモール「PayPayモール」を展開していた(2023年10月にYahoo!ショッピングと統合)。  つまり、2021年からの2年間、ソフトバンクはPayPayとPayPayモールの拡大に集中しており、Yahoo!ショッピングの機能開発などはその間ストップしていたのだと考えられる。  このソフトバンクの動きは、楽天が楽天市場の多くの社員を楽天モバイルに転籍させたり、新卒社員をほぼモバイル部門に配属した姿と重なる。  すでに成熟し安定した収益をあげているYahoo!ショッピングの優先度を下げてでも、ソフトバンクはQRコード決済にヒト・モノ・カネのリソースを集中投下していたと言われている。

楽天を凋落させた“QRコード決済戦争”

 今では世に浸透したQRコード決済だが、以前はキャッシュレス決済と言えばクレジットカードが主流だった。そして、そこで圧倒的王者だったのが楽天カードマンでおなじみの楽天だった。  そんな金融部門で楽天が優越していた状況に対し、ソフトバンクは、クレジットカードからQRコード決済へと、決済のスタンダードを変える戦争を起こしたのだ(正確に言えば市場を拡大した)。  なぜソフトバンクは、ここまで決済戦争で勝つことにこだわっているのか。  それはECと決済の両者の競争を制することが自社のシェアを伸ばすことにつながるからだ。かつて楽天は、楽天市場と楽天カードの両者を伸ばすことで自社の規模を拡大してきた。これが楽天経済圏の始まりである。  この「EC✕決済」の経済圏を今度はソフトバンクが制しにかかっているのである。具体的には国内のキャッシュレス決済をクレジットカードからQRコードに移行させることで、これまでのシェアの均衡をソフトバンクは崩しにかかったのである。  移行が生じたことによって、現在、楽天の中では好調だった楽天カードも業績が危くなり、楽天市場もその影響を受けて成長が鈍化し、楽天経済圏そのものが危ういという状況に陥っている。
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ソフトバンクが狙うPayPayの「スーパーアプリ」化
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EC・D2Cコンサルタント、Amazon研究家、株式会社GROOVE CEO。慶應義塾大学環境情報学部卒業後、新卒採用第1期生としてアマゾンジャパン合同会社に入社、出品サービス事業部にて2年間のトップセールス、同社大阪支社の立ち上げを経験。マーケティングマネージャーとしてAmazonスポンサープロダクト広告の立ち上げを経験。株式会社GROOVEおよび Amazon D2Cメーカーの株式会社AINEXTを創業。立ち上げ6年で2社合計年商50億円を達成。Youtubeチャンネル「たなけんのEC大学」を運営。紀州漆器(山家漆器店)など地方の伝統工芸の再生や、老舗刃物メーカー(貝印)のEC進出支援にも積極的に取り組む。幼少期からの鉄道好きの延長で月10日以上は日本全国を旅している

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