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「楽天の息の根を止める」意外な企業の正体。“楽天経済圏”を崩壊させる周到な戦略

LINE・Yahoo!・PayPayの連合軍による攻勢が

 対する楽天も、策を講じてきた。  楽天市場、楽天カード、楽天モバイルなどEC、決済、通信など複数の事業を展開しており、単なる「EC✕決済」のシェアを大きくするだけはなく、楽天経済圏を作ろうとしてきた。  だが、現状ではさらなる野望であるスーパーアプリ化を巡っては、ソフトバンクがやや有利な状況である。  今後は、ソフトバンクであるLINE・Yahoo!・PayPayが連携した「LYP連合軍」による攻勢もはじまるからだ。  Yahoo!は2021年にLINEと経営統合、2023年に再編してLINEヤフー株式会社が誕生した。その結果、Yahoo!ショッピングではこれまでよりもモバイル事業と関係を密にしたサービスを展開していくことが予想される。  具体的には、LYP連合軍による経済圏によって共通してポイントを使用できるようなマイレージクラブを整備する可能性が高い。加えてLYP経済圏が保有するビッグデータを活用し、Yahoo!ショッピングの機能改善が抜本的に進んでいくだろう。  そしてここから楽天市場との真っ向勝負が始まる。Yahoo!ショッピングが本腰を入れてサービスの改善をはじめると、いよいよ楽天は土台から危うくなる。

「手厚いポイントサービス」をソフトバンクが展開したら…

 では楽天はどのような戦略が考えられるだろうか、この答えは実は簡単だ。既存の顧客、特に長年楽天市場を愛用しているロイヤル顧客を大事にすることである。けれども、直近の動きを見る限りでは楽天の向かっている方向性は別のようだ。  言うまでもなく、楽天の強みは、楽天経済圏で共通して使用可能な楽天ポイントだ。ときにポイントのばらまきと揶揄されるほどに、ユーザーは楽天ポイントの恩恵を受けることができていた。  しかし、ここにきてモバイル事業への投資が響いているのだろう、自社都合でポイント改悪が続いている。  これまでに楽天が実施していたような手厚いポイントのサービスや出品者へのキャンペーンをソフトバンクが展開する可能性は高い。一方の楽天は改悪が続いている状況だ。ここにメスを入れなければ、ソフトバンクが楽天のパイを一気に奪うのは時間の問題になる。 「PayPayポイントのほうが貯まりやすいし、そっちのほうがお得じゃない?」と楽天経済圏のロイヤルカスタマーに思われた途端に、雪崩のようにソフトバンクに急激にシェアが奪われてしまうのである。 「楽天市場でモノを買う」という行為が、ポイント還元率以外にメリットを提供できなければ言葉通り「お金だけの関係だった」となってしまう。
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改悪が続けば、コアユーザーの流出は避けられない
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EC・D2Cコンサルタント、Amazon研究家、株式会社GROOVE CEO。慶應義塾大学環境情報学部卒業後、新卒採用第1期生としてアマゾンジャパン合同会社に入社、出品サービス事業部にて2年間のトップセールス、同社大阪支社の立ち上げを経験。マーケティングマネージャーとしてAmazonスポンサープロダクト広告の立ち上げを経験。株式会社GROOVEおよび Amazon D2Cメーカーの株式会社AINEXTを創業。立ち上げ6年で2社合計年商50億円を達成。Youtubeチャンネル「たなけんのEC大学」を運営。紀州漆器(山家漆器店)など地方の伝統工芸の再生や、老舗刃物メーカー(貝印)のEC進出支援にも積極的に取り組む。幼少期からの鉄道好きの延長で月10日以上は日本全国を旅している

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