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「楽天の息の根を止める」意外な企業の正体。“楽天経済圏”を崩壊させる周到な戦略

ソフトバンクが狙うPayPayの「スーパーアプリ」化

 現在、QRコード決済におけるPayPayのシェアは39%であるが、ソフトバンクの資金力を考えれば今後さらにそのシェアを拡大する可能性が高い。  Yahoo!ショッピングを含むネットショッピングもPayPay経済圏に新たに組み込み、かつての楽天と同様にポイント還元率を高めるポイントばらまきを行えば、楽天市場からYahoo!ショッピングを利用するひとは増加するだろう。  では、ソフトバンクは一体何を目指そうとしているのか。それは楽天経済圏のように「EC✕決済」で自社のシェアを伸ばすことではなく、それを遥かに凌駕する計画の実現である。  それが、PayPayの「スーパーアプリ」化である。スーパーアプリとは、簡単に言えば一つのサービスだけでなく、なんでもできるアプリのことで、これはアジア圏においてよく見られる形態だ。  たとえば、中国のWeChatはオンライン通話、オンラインショッピング、支払い、送金、タクシーの予約、チケット予約、税金の申請、オンライン診察、健康状態の証明など一つのアプリで複数のサービスが展開されている。  ほかにはマレーシアで生まれたGrabも、現在では配送・フードデリバリー・金融サービス・旅行予約・オンライン医療などの機能を有しており、マレーシアにとどまらず、インドネシア、シンガポールなど東南アジアにおける生活・ビジネスのインフラアプリとなっている。

分断されたアプリが集約されれれば…

 では、ソフトバンクはどうか。  ソフトバンクは現在PayPay、Yahoo!ショッピング、出前館、Yahoo!トラベル、一休とそれぞれが分断されているものの、決済、EC、フードデリバリー、旅行予約など複数の機能を一つのアプリに集約すれば、今後スーパーアプリになるポテンシャルを秘めている。  このスーパーアプリ化により、ユーザーIDをデータ統合できるため、北海道で一休を使って高級ホテルに長期滞在をしている人は、ふるさと納税で高級な海鮮物を購入しがちである、よってこんなマーケティング施策を打とう、といったユーザーのデータを一元管理することによるメリットを享受できるようになる。  各サービスのユーザーIDの統合、それによる正確かつ細かいマーケティング施策。すなわちPayPayのスーパーアプリ化。これが次にソフトバンクが目指す姿である。
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LINE・Yahoo!・PayPayの連合軍による攻勢が
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EC・D2Cコンサルタント、Amazon研究家、株式会社GROOVE CEO。慶應義塾大学環境情報学部卒業後、新卒採用第1期生としてアマゾンジャパン合同会社に入社、出品サービス事業部にて2年間のトップセールス、同社大阪支社の立ち上げを経験。マーケティングマネージャーとしてAmazonスポンサープロダクト広告の立ち上げを経験。株式会社GROOVEおよび Amazon D2Cメーカーの株式会社AINEXTを創業。立ち上げ6年で2社合計年商50億円を達成。Youtubeチャンネル「たなけんのEC大学」を運営。紀州漆器(山家漆器店)など地方の伝統工芸の再生や、老舗刃物メーカー(貝印)のEC進出支援にも積極的に取り組む。幼少期からの鉄道好きの延長で月10日以上は日本全国を旅している

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