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“インバウン丼”で話題の豊洲「千客万来」に客が困惑する場所が…改善すべき“ちぐはぐなコンセプト”

施設のコンセプトがちぐはぐ…

豊洲千客万来

なぜかカメラの展示が…

そもそもこうしたテーマパーク型の商業施設は、いかにその空間がテーマに沿って作り込まれていて、来た人に「特別感」を与えられるかがその成否を決めるといってもいい。 その点でいうと、残念ながら作り込みのレベルはあまり高くない、というのが筆者の率直な感想だ。そもそも、施設のコンセプトがちぐはぐなところがある。 例えば、「万葉の湯」のフロントには、カメラがたくさん展示してある。看板を読む限り、万葉倶楽部のルーツに関係があることはわかるが、そもそも、江戸というテーマには馴染まず、どことなく、突飛な感じがある。地方の博物館や観光地にありがちな、展示できそうなものをなんでも飾った、という感じがしなくもない。 私が訪れたときも、他の人が「なんでカメラなの?」と言い合っている様子が目に入った。この展示に困惑を覚えている人も多いようである。
豊洲千客万来

施設のメインストリートともいえる「目利き横丁」から見えるバックヤード

また、明らかに店のバックヤードを見せてしまっている場所もあった。空きスペースが無造作になっていたり、PCや事務用品が散乱している風景もあったりする。
豊洲千客万来

無造作な空きスペース

施設自体のテーマが、現実を隠して「江戸の市場」という設定で運営されているから、どうしてもこうした風景のいびつさが目立ってしまう。

「イマーシヴ・フォート東京」は秀逸だった

先ほども述べた通り、テーマパーク的な開発は、ここ最近の観光地のトレンドでもあり、うまくいけば顧客にとっては非常に魅力的だ。しかし一方で、「テーマ」をうまく演出するためには相当の知恵や努力が必要で、それが不完全だと、観光客にとってはあまり良い体験にはならない。 例えば、このバックヤードの問題で興味深いと思ったのは、3月1日に、同じく東京湾岸エリアのお台場に誕生した「イマーシヴ・フォート東京」というテーマパークだ。USJや西武園ゆうえんち再建に関わった森岡毅が代表を務める株式会社・刀による運営で、れっきとしたテーマパークとして作られている。だから、「千客万来」を比較するのは酷なことかもしれないが、非常に秀逸な空間作りを行っている。
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今後は「テーマ」の完遂に期待
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ライター・作家。チェーンストアやテーマパークをテーマにした原稿を数多く執筆。一見平板に見える現代の都市空間について、独自の切り口で語る。「東洋経済オンライン」などで執筆中、文芸誌などにも多く寄稿をおこなう。著書に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』(集英社)『ブックオフから考える』(青弓社)
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