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“インバウン丼”で話題の豊洲「千客万来」に客が困惑する場所が…改善すべき“ちぐはぐなコンセプト”

全国に数多くあるテーマパーク。今もなお新しいテーマパークが生まれては人々を楽しませ続けている。しかし、そんなテーマパークには、あまり語られることのない側面が存在する。そんな、「テーマパークのB面」をここでは語っていこう。 2024年2月1日、豊洲市場の隣に誕生した「豊洲千客万来」。豊洲市場と同じく2018年に開業する予定だったが、事業者の変更やコロナ禍を経て、5年以上も遅れた開業となった。 最終的な施設管理者は、小田原を拠点とする温泉施設グループ「万葉倶楽部」。施設は、同社が運営する温泉施設、それと飲食街の「豊洲場外 江戸前市場」から成り立っている。
豊洲千客万来

豊洲千客万来

江戸時代にタイムスリップしたような感覚に

施設全体としては江戸時代の街並みがテーマになっていて、「日本の食を通じて世界に日本文化をアピールする」という理念のもと、訪日観光客向けの施設であることが全面に押し出されている。実際、施設の建築には本物の瓦が使用されていたり、木造建築がうまく使われていたりと、実際の江戸時代にあった町屋を再現する意図が伝わってくる。事実、その街並みや、内部の空間も含めて、タイムスリップしたかのような雰囲気もある。さながら江戸時代をテーマにしたテーマパークのようだ。 こうしたテーマパーク型の商業施設は、お台場の「台場一丁目商店街」や「新横浜ラーメン博物館」あるいは梅田の「滝見小路」のように1990年代以降に登場しはじめ、わりあいメジャーになってきた。
羽生PA(上り)

羽生PA(上り)

また、近年では公共セクターに近い主体が、テーマ性を押し出した施設を作ることも増えている。例えば東北自動車道羽生PA(上り)では、『鬼平犯科帳』をモチーフに、パーキングエリア全体が江戸の街並みのようになっていて、「豊洲千客万来」と近い方向性を持つ場所になっている。 観光地の「テーマパーク化」については、思想家の東浩紀が『テーマパーク化する地球』の中でも指摘していて、世界中の観光地開発における定番パターンともなっている。 では、テーマパークとして見たとき、千客万来にはどのようなポテンシャルがあるだろうか。筆者は、実際に同施設を訪れることにした。

実際は外国人ばかりではなかった

まず感じたのは、現実の報道と少し乖離していることだった。例えば、いくつかの報道では、ここで売られている海鮮丼のあまりの値段の高さから「インバウン丼」というネットミームも生まれたりした。こうしたニュースを見ていると「千客万来」にいるのが、外国の人だけであるかのような印象も持ちかねない。 しかし、その客層は外国人と日本人で4:6ほど。日本人の中でも、特に若い層が多い。 また、話題になった「インバウン丼」もしっかり売られているが、それ以外の、いわゆる「観光地としての適正価格」のメニューもあって、食の選択肢の幅は広い。筆者が訪れたときには、抹茶のモンブランやクレープなどのスイーツに長い列ができていた。 このように、オープン当初指摘されていたことは、イメージ先行の側面が強く、その点だけで「千客万来」を批判するのは少し可哀想だとも思う。一方、この施設をテーマパークとして見た場合、疑問に思うことがいくつかあった。
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施設のコンセプトがちぐはぐ…
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ライター・作家。チェーンストアやテーマパークをテーマにした原稿を数多く執筆。一見平板に見える現代の都市空間について、独自の切り口で語る。「東洋経済オンライン」などで執筆中、文芸誌などにも多く寄稿をおこなう。著書に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』(集英社)『ブックオフから考える』(青弓社)
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