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大谷翔平を“ロボット”呼ばわりするアメリカ人記者も。リップサービスよりも大事なこと

フィールドでのプレーこそが「多くの人たち、ファンとのコミュニケーションの手段になる」

 公の場で英語で話したほうがアメリカのファンに親しみを持たれるだろうが、それ以上にプロとして仕事を全うすることを優先しているはずだ。チームメイトとのミスコミュニケーションが原因で試合に負けたり、自分の発言が不適切なかたちでメディアに取り上げられたりするリスクを冒す必要はない。大谷が言う通り、プロ野球選手にとって何よりも重要なのは、人前で英語を話すことではなく、プレーで結果を残すことだ。そして大谷は、フィールドでのプレーこそが「多くの人たち、ファンとのコミュニケーションの手段になる」という自身の考えを口にしている。  確かに僕らは、大谷がインタビューで語る言葉よりもまず、彼の特大ホームランや剛速球に魅了される。大谷の超人的なプレーの前では、言葉が随分とちっぽけなものに思える。僕らが大谷の言葉に感動したり感心したりするとしたら、それはまず彼のプレーがあるからだ。スーパースターの言葉だからこそ、みんながありがたがる。言葉そのものに価値があるのではなく、プレーあってこその言葉なのだ。

マイケル・ジャクソンのダンスと大谷翔平の本塁打

 たとえば20世紀後半、マイケル・ジャクソンの音楽とダンスは人種や国籍を超えて人々に感動を与えたが、トップアスリートのプレーにもそれに似たパワーがある。スポーツは単なる競争やゲームではなく、エクストリームな身体表現だ。フィギュアスケートや体操など、芸術性の高い競技は身体表現としてわかりやすいが、野球やサッカーといった競争性の高い競技にも芸術性を見いだすことはできる。  大谷にはきっと、自身が野球というスポーツを通じた表現者、あるいはアーティストであるという自覚があるだろう。  大谷は日本語でも英語でも、あまり多くを語らない印象がある。マスコミやスポンサーのインタビューには答えるが、大谷が発する言葉は当たり障りのない、優等生的な内容に終始することが多い。「チャンスで打てたのは良かったかなと思います」「明日も頑張りたいと思います」といった具合だ。ハッキリ言って、コメント自体はあまり面白くない。
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アメリカ人記者がみた取材対象としての大谷翔平
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(うちの むねはる)ライター/1986年生まれ、東京都出身。国際基督教大学教養学部を卒業後、コンサルティング会社勤務を経て、フリーランスライターとして活動。「日刊SPA!」『月刊スラッガー』「MLB.JP(メジャーリーグ公式サイト日本語版)」など各種媒体に、MLBの取材記事などを寄稿。その後、「スポーティングニュース」日本語版の副編集長、時事通信社マレーシア支局の経済記者などを経て、現在はニールセン・スポーツ・ジャパンにてスポーツ・スポンサーシップの調査や効果測定に携わる、ライターと会社員の「二刀流」。著書『大谷翔平の社会学』(扶桑社新書)

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