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大谷翔平を“ロボット”呼ばわりするアメリカ人記者も。リップサービスよりも大事なこと

アメリカ人記者がみた取材対象としての大谷翔平

 ロサンゼルス・エンゼルスの地元紙『オレンジ・カウンティ・レジスター』の記者として、エンゼルスを10年以上取材しているジェフ・フレッチャーは著書『SHO-TIME 大谷翔平 メジャー120年の歴史を変えた男』で、取材対象としての大谷についてこう書いている。 「そして仮に話したとしても、大谷は囲み取材でお決まりの言葉しか口にしないという定評ができあがっていた。あまりにも感情がこもっていないインタビューが続いたので、『ロボット』呼ばわりする記者までいた」  同じ日本人メジャーリーガーでも、たとえばイチローは現役時代、個性的な表現や独特の言い回しで注目を集めたり、とんちんかんな質問をする記者に「逆質問」して困惑させることもあった。ダルビッシュ有は公式の記者会見でもSNSでも、球界に対して「もっとこうした方がいい」「これはよくない」といった意見を積極的に述べ、賛否両論を巻き起こしてきた。新庄剛志はワールドシリーズ出場後に「五右衛門風呂に入りたい」とコメントして通訳を困らせるなど、毎回のインタビューが一発芸のようだった。  こうした先人たちの個性溢れる言葉遣いに比べると、大谷が発する言葉は極めて平凡で、まるでAIが回答しているかのように機械的だ。ChatGPTのほうがより気の利いたコメントを返すかもしれない。でも、その言葉の平凡さこそが大谷の、プレーの非凡さをさらに際立たせているという印象もある。

プレーで賛否両論を巻き起こしてきた大谷

 大谷はダルビッシュのように、歯に衣着せぬ発言によって賛否両論を巻き起こすことはしないが、「二刀流」というプレースタイルそのものが賛否両論を巻き起こしてきた。大谷のプレー自体が強烈なメッセージ性を有しているからこそ、彼は言葉で強いメッセージを発する必要がない。大谷はマイクを向けられたときではなく、野球のフィールドにいるときこそ最も雄弁なのだ。
(うちの むねはる)ライター/1986年生まれ、東京都出身。国際基督教大学教養学部を卒業後、コンサルティング会社勤務を経て、フリーランスライターとして活動。「日刊SPA!」『月刊スラッガー』「MLB.JP(メジャーリーグ公式サイト日本語版)」など各種媒体に、MLBの取材記事などを寄稿。その後、「スポーティングニュース」日本語版の副編集長、時事通信社マレーシア支局の経済記者などを経て、現在はニールセン・スポーツ・ジャパンにてスポーツ・スポンサーシップの調査や効果測定に携わる、ライターと会社員の「二刀流」。著書『大谷翔平の社会学』(扶桑社新書)

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