更新日:2024年05月04日 10:06
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「くら寿司銀座店」“露骨すぎる日本要素”から読み取れる、「日本人を相手にしていない」という狙い

「特別な街」銀座だからこその演出なのだろう

くら寿司は、こうした「体験型」の店舗を、特に東京を中心とした「グローバル旗艦店」において積極的に取り入れてきた。原宿や浅草については、銀座店よりも早くこうした取り組みを行ってきており、そこでの経験を活かして、今回の銀座店の出店に踏み切ったのだろう。 特に、銀座の場合は、外国人観光客にとっても、日本人にとっても、どこか「特別な街」としてのイメージが根強い。NTTコムリサーチによれば、訪日外国人観光客の銀座のイメージは「高級感がある」が全体の半数を占めたという。 そのため、銀座で「くら寿司」に行く人は、本来の回転寿司的な「ぱっと食べてぱっと帰る」ということをそこまで強くニーズとして持っていない。むしろ「銀座」ならではの特別な体験をしたい、と思っている人の方が大半だろう。

“露骨な日本要素”を歓迎する外国人の存在

興味深いのは、そのような「特別性」を満たすための施設として「テーマパーク的」な演出が選ばれたことだ。最近は、豊洲の「千客万来」などが顕著だが、いわゆる“日本的なもの”を体感させるためにテーマパーク的な空間演出を取り入れ、それでインバウンド需要に対応しようとする施設が多い。いわゆる「日本らしさ」を取り入れたテーマパークとでもいおうか。 これらの施設は、我々日本人から見ると、ちょっとびっくりするぐらいに日本っぽさを押し出していたりする。なんというか、「イメージとしての日本」のような感じだ。逆に、あまりにも露骨に「日本」向けすぎると、日本人としては、「そこまで行かなくていいかな……」ともなりそうだが、外国の人にとっては、むしろ行きたい“特別な場所”になる。 また、「千客万来」でも、あるいは同じく最近話題の「ニセコ」でもそうだが、そうした場所では商品の値段をかなり高めに設定して、日本人からするとちょっと手が出ないような価格帯だったりする。 こうした意味では、テーマパーク的な演出がその場所を「外国人観光客向け」に特化させる“ゾーニング的な役割”も果たしているといえるのだ。
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日本に広がる“テーマパーク的開発”
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ライター・作家。チェーンストアやテーマパークをテーマにした原稿を数多く執筆。一見平板に見える現代の都市空間について、独自の切り口で語る。「東洋経済オンライン」などで執筆中、文芸誌などにも多く寄稿をおこなう。著書に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』(集英社)『ブックオフから考える』(青弓社)
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