ニュース

「2024年3月に開園したテーマパーク」“ショッピングモールの居抜き”なのに違和感が全くない理由

3月1日にオープンした「イマーシブ・フォート東京」。かつてお台場に存在した「ヴィーナスフォート」の跡地を活用した話題のテーマパークだ。プロデュースしているのは、これまでUSJや西武園ゆうえんちのリニューアルに携わってきた森岡毅が代表を務める株式会社・刀。否が応にも期待は高まるものだ。 本邦ではじめてとなる「イマーシブシアター」というアトラクションを主体としているようだが、具体的には何が特色で、どういった楽しみ方があるのか。テーマパークラボ代表の中野キューさんに見どころを紹介してもらったのが前回の記事後編となる今回は、「戦略面」について重点的に聞いてみることにした。
イマーシブ・フォート東京

商業施設だったことを最大限活かす設定になっている(撮影・中野キューさん)

「シャッター街であること」に違和感がない設定

イマーシブ・フォート東京が話題になった理由の一つ、それは「居抜き」で作られたことだ。もともとヴィーナスフォートというショッピングモールで、ヨーロッパの街並みが忠実に再現されていた場所だった。 「園内の街並みはヴィーナスフォートの内観を活かしていて、雰囲気づくりのきっかけにはなっています。ちなみにアトラクションになっていない部分は、商業施設だったということもあってシャッターが閉まっており、アトラクションの壁になっていたりもします。入り口から20mぐらいシャッター街が続くのですが、ここにも一つ仕掛けがあります。街自体の治安があまり良くないというバックグラウンドストーリーがあるんです。 例えば『スパイ・アクション!』という、パーク内の通路を用いたアトラクションでは、マフィアが銃を撃ち、街中で住民を人質に取るというようなストーリーが展開されています。だから、『治安悪化により臨時休業にご理解ください』という案内がマップに書かれているんですよね。『夜間は営業を自粛しているのでシャッターが閉まっている』、と理屈が付く」(中野キューさん、以下同じ)

「逆向きのジェットコースター」にも通じる理念

「居抜き」によって、必然的に前の建物から残る部分も、設定をうまく作り込むことで、テーマパークの要素とする。そんな手法がここには見られる。このように、もともとある施設を「再利用」して、うまく新しい体験を作り出すことは、森岡毅がUSJのリニューアルから心掛けてきたことだ。例えば、森岡はUSJのジェットコースターを逆向きに走らせることで、その施設を新しいものにした。 「森岡さんがこれまで取り組んできたことの集大成ともいえます。テーマパークで体験できる物語体験の最上位のものを目指して、イマーシブ・フォート東京を作ったんだと思います」
次のページ
これまでのテーマパークと異なるポイントは…
1
2
ライター・作家。チェーンストアやテーマパークをテーマにした原稿を数多く執筆。一見平板に見える現代の都市空間について、独自の切り口で語る。「東洋経済オンライン」などで執筆中、文芸誌などにも多く寄稿をおこなう。著書に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』(集英社)『ブックオフから考える』(青弓社)
記事一覧へ
おすすめ記事
ハッシュタグ