自身がシングルマザーゆえ、当事者の感覚が理解できる
めぐみ不動産コンサルティングでは、具体的にどのような事業を展開しているのか。
「弊社が行っているのは、住宅を借りたくても借りられない人に対する居住支援です。
シングルマザーのシェアハウスには特に力を入れていて、2棟10室をシングルマザーに向けて運営しています。理由としては、
経済的な基盤がないことには自立ができないため、まず住まいを提供しようと考えたからです。そのほか、空き家活用事業として障害者のグループホームに物件を貸しています」
竹田氏が利幅の大きな物件の仲介手数料に目もくれず、社会の片隅で困っている人々のためになる居住支援を行う背景には、こんな過去が関係している。
「物心ついたときから母が人工透析をしており、家庭では母に代わって料理などをしていました。
家族の面倒をみていくうちに、面倒見のいい人間になってしまったようです(笑)。その後も、部活動でマネージャーに選ばれるなど、その路線を突っ走って、現在でも困っている人がいると手を差し伸べたくなってしまいます。
社会人経験を経て独立した当初、私にはやってみたいことがありました。それはこども食堂です。自分自身もシングルマザーだったこともあり、他人事ではいられない感覚がありました。しかし調べていくと、子ども食堂の立ち上げには多額の資金が必要でした。それならばと、
シングルマザーの貧困問題を解決するため、シェアハウスを立ち上げることになったのです」
シングルマザーと貧困がセットになってしまっている現状を変えたい。そんな思いでシェアハウスを立ち上げ、事業は軌道に乗った。お互い似た事情を持つ人たちが、支え合いながら暮らす。それは保育料などの節約にも一役買ったのだという。そして2023年には念願だった子ども食堂「めぐみキッチン」をオープンさせた。
だがもちろん、すべてが順風満帆だったわけではない。それなりの辛酸も舐めた。
「立ち上げ当初の話です。あるシングルマザーの方が入居したのですが、入居初日から子どもを部屋から閉め出していきなり他のお部屋に泊まるということが起きたのです。他の入居者からの評判も悪く、頭を悩ませていたところ、その方の兄と名乗る方から連絡がありました。驚いたのは、
『妹は統合失調症です。ご存知なかったんですか?』というんです。病気のことを伏せて入居したんですね。
私は精神障害者を一律に拒否しようとは思いませんが、
シェアハウスは緩やかな共同生活なので、それに適合しない方は治療を優先させるべきだと思っています。この方の場合は、最終的にはご家族の強い希望で入院することになりました。また、このことがきっかけで障がい者の住まいが一般賃貸の他に必要だと思い、グループホームを始めることになりました」
就労支援も事業として行っている
めぐみ不動産コンサルティングでは障害者のグループホーム「ワンダフルライフ」も運営していることは前述の通りだが、これが竹田氏が目指す「社会問題解決型」の屋台骨といえる機能を果たしている。
「住宅弱者と呼ばれる人たちのなかでも、障害者は特に入居が困難です。であれば、私がグループホームを運営しようと思いました。子ども食堂『めぐみキッチン』はB型就労支援の作業場でもありますので、
ここで障害のある人たちと社会の接点を作り、大家さんに紹介できるようになるまで働いてもらいます。また、シングルマザーの方たちのなかでどうしても職が決まらない場合には、『ワンダフルライフ』で調理、洗濯、掃除、食事の介助などの仕事をしてもらう場合もあります。
就労証明を得て保育園を申請し、保育園が決まってから自分の好きな仕事を探す人もいます」
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:
@kuroshimaaki
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