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「この野球マンガがすごい! 2024」BEST3。快挙を達成した『ダイヤモンドの功罪』が独走状態に

トリッキーなアイデアと駆け引きで、プロ野球界を生き抜く第3位

『ドラハチ』既刊4巻 原作・あじな優、漫画・夏川勇人(講談社)

<『ドラハチ』あらすじ> 高卒捕手の黒金八郎は、想いを寄せる幼馴染・土門鈴から出された「結婚の条件」を満たすため、超弱小球団「カーボンズ」にドラフト8位で入団。過酷なプロ野球の世界で、入団1年目での優勝&MVPの実現を目指し、かつてない下克上に挑む。 オグマ 3位は僕のほうから発表しますか。プロ入団1年目でのチーム優勝&MVP獲得を宣言した『ドラハチ』となりました! タイトルは、主人公がドラフト8位で入団することから名付けられています。 ツクイ 野球の才能はさほどでもない主人公が、知恵と駆け引きで相手を出し抜いていくタイプのストーリーですよね。 オグマ はい。水島新司ファンのなかで特に評価が高い『ストッパー』という作品がありますけど、本作は「令和の『ストッパー』になれるかもしれない」という可能性を感じさせます。アイデアの斬新さと、発想の面白さで読者を惹きつけていくという。 ツクイ いち例を挙げると、非力なはずの主人公がキャンプのバッティング練習でサク越えを連発するというエピソードが、作中に登場します。じつは違法に高反発改造したバットを使っていた、というネタなんですけど、別にキャンプで違法バットを使っても罰則はない。ドラフト8位の主人公が、自分の存在をアピールするためには手段なんて選でいる余裕はないんだ、という覚悟を示すと同時に、毎日サク越えを数えて報告しているだけの球団担当メディアを痛烈に皮肉っているところが面白い。 オグマ そうしたトリッキーかつテンションの高いエピソードを連発しながら、ペナントレース後半まで盛り上げていけるのか。今後に注目です。

注目トピックは『忘却』アニメ化と、クロマツテツロウの手術

ツクイ 今年の注目ランキングのベスト3を挙げたところで最近、野球マンガ業界を賑わせたトピックスについて話していきましょうか。まず、映像化作品でいうと『忘却バッテリー』のアニメ化があります。 オグマ もともと『ジャンプ+』の人気作だっただけに、アニメになってどうなるのかという不安も少しありましたけど、開けてみたら思いのほか一気にブレイクして、春アニメの主役になりました。 ツクイ 中心となるセンターラインのキャラクターが際立っている作品なので、うまく女性アニメファンの琴線に触れてくれるといいなと思ってはいたものの、まさかここまで裾野が広まるとは想像しなかったですよね。 オグマ アニメイト池袋本店にPOP UP SHOPを開く一方で、プロ野球パ・リーグとコラボするなど、多方面に渡る展開を上手にこなしていると思います。 ツクイ このまま2期、3期とアニメが続いていくことを期待したいですね。 オグマ 映像化の話だと、WOWOWで『ドラフトキング』がムロツヨシさん主演でドラマ化されたことが、僕のなかではとても大きい出来事でした。作者のクロマツテツロウ先生が、いよいよ名実ともに野球マンガ界を牽引する立場であることが証明されたなと。 ツクイ クロマツ先生といえば、3月に発売された『ベー革』5巻で、先天性の指定難病である「もやもや病」の手術を行っていたことを明かされていました。オグマさん、ご存知でしたか? オグマ いえ、知りませんでした。『ベー革』は休載していたものの、『ドラフトキング』は進んでいたので、まさかそんなことが起きていたとは……。 ツクイ 僕もそこで「はっ、クロマツ先生が原作の『山本昌はまだ野球を知らない』が止まっているのも、そのせいだったんだ!」と思い至りました。そうですよね、クロマツ先生! 見てますか、クロマツ先生! 『山本昌は〜』の2巻、待っていていいんですよね!?
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オレ流落合の異世界モノ
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