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イーロン・マスクのスペースXが「技術革新を続けられる」破天荒な理由

成功の一因は、スペースXならではのテンポの速さ

スペースXのやることはとにかくテンポが速い。第3回の試験は、2回目から4ヶ月後の2024年3月14日に実施された。 今回は完全に打ち上げを成功させ、第2段は地球周回軌道に乗った。第2段は軌道上で、ペイロードドアの開閉試験及び、推進剤のタンク間移送試験を実施。飛行中の第2段との通信は、NASAのデータ中継衛星システム(TDRSS)と、スターリンクとの2系統で行った。ここで注目すべきはスターリンクによる通信で、地球をほぼ一周する間、船内外の鮮明な動画像を、途切れることなく中継し続けた。第2段は大気圏再突入時の姿勢制御に失敗、そのまま大気圏に突っ込んで破壊した。 さらに、3ヶ月と空あけずに2024年6月6日には、第4回打ち上げ試験を実施。スーパーヘビーはメキシコ湾へ逆噴射で減速しての軟着水に成功。第2段もまた姿勢を崩すことなく大気圏に再突入した。空力加熱で姿勢制御用の「フラップ」と呼ばれる小翼が破損したものの、最後まで姿勢を維持し、エンジンも点火して逆噴射に成功。オーストラリア大陸北西のインド洋に軟着水した。初号機の爆発から1年1ヶ月、長足の進歩と言うほかない。 2018年の開発開始から6年で、スペースXは一私企業ながら、「サターンV」を超える巨大ロケットを、とにもかくにも打ち上げることに成功したのである。 <文/松浦晋也>
ノンフィクション・ライター。宇宙作家クラブ会員。1962年東京都出身。日経BP社記者を経て2000年に独立。航空宇宙分野、メカニカル・エンジニアリング、パソコン、通信・放送分野などで執筆活動を行っている。『飛べ!「はやぶさ」 小惑星探査機60億キロ奇跡の大冒険』(学研プラス, 2011年)、『はやぶさ2の真実 どうなる日本の宇宙探査』(講談社新書, 2014年)、『母さん、ごめん。 50代独身男の介護奮闘記』(日経BP, 2017年)など著書多数。
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日本の宇宙開発最前線 日本の宇宙開発最前線

なぜ日本では「スペースX」が生まれないのか

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