任天堂が「スマホゲームに負けない」理由。「Switchの後継機種」は“1兆円の山”を超えられるか
経済本や決算書を読み漁ることが趣味のマネーライター・山口伸です。『日刊SPA!』では「かゆい所に手が届く」ような企業分析記事を担当しています。さて、今回は任天堂株式会社の業績について紹介したいと思います。
ファミコンから始まり、NINTENDO64、Wii、Switchと数々の名機を生み出してきた任天堂は、ハード・ソフトがヒットする度に売上高が1兆円を超え、再び下がるというようなループを繰り返していきました。近年もSwitchによる好調が続いており、スマホゲームが普及するなかでも根強い人気を誇っています。今年度中にはSwitchの“後継機”を発表するとしており、再び注目を集めることになるでしょう。近年における任天堂の業績をまとめてみました。
任天堂は1889年、工芸家である山内房治郎氏が始めた花札の製造業が祖業です。1902年に日本で初めてトランプの製造を開始し、53年にはプラスチック製トランプの量産を開始しました。63年には現社名に変更し、77年発売の「カラーテレビゲーム15」を皮切りに家庭用ゲーム機市場へ参入しました。同ゲーム機はテニスやホッケーなど15種類のゲームを内蔵。大卒初任給が約10万円だった当時、販売価格は1万5,000円でした。同社を世界的企業として名を轟かせたのは83年発売の「ファミリーコンピュータ(ファミコン)」です。特に85年発売のソフト「スーパーマリオブラザーズ」は国内外で売れ、ファミコンの販売を牽引しました。
その後、90年に「スーパーファミコン」、96年には「NINTENDO64」を発売し、両機とも任天堂を代表する名機として知られています。携帯型ゲーム機においては90年に「ゲームボーイ」、98年に「ゲームボーイカラー」を発売、2004年には上下のうち下画面がタッチパネルとなった「ニンテンドーDS」を発売しました。
任天堂はハード・ソフトがヒットするたびに売上高が伸びる山を繰り返してきました。06年発売の「Wii」のヒットにより、06年3月期に5,092億円だった売上高は翌年度に9,665億円まで増大、その翌年度には1兆6,724億円となりました。
近年の業績を見てみると、やはりコロナ禍では巣ごもり需要が牽引し、売上・利益共に大幅に増大しました。2020年3月期から24年3月期における業績推移は次の通りです。
【任天堂株式会社(2020年3月期~2024年3月期)】
売上高:1兆3,085億円→1兆7,589億円→1兆6,953億円→1兆6,017億円→1兆6,719億円
営業利益:3,524億円→6,406億円→5,928億円→5,044億円→5,289億円
21年3月期、22年3月期の好調は外出自粛で娯楽が少ない中、据置機としても遊べる携帯型ゲーム機「Nintendo Switch」が注目されたことが要因です。初代Switchは2017年3月に発売され、2018年3月期以降、任天堂はWiiのヒットに続く売上高1兆円超えの山を維持してきました。巣ごもり需要とはいえ、Switchの成功がなければコロナ禍の業績拡大は無かったことでしょう。
24年3月期は需要の一巡もあり、同社は売上高1兆4,500億円を予想していましたが、23年5月発売の自社ソフト「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」が1年で2,000万本超えとなるヒット作となり、業績を牽引しました。また、任天堂初の映画「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」によるゲーム販売効果も相まったことで23年3月期以上の業績となりました。
70年代後半から家庭用ゲーム機に参入
Switchの成功がなければ…
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経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 Twitter:@shin_yamaguchi_
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