デジタル

iPhone 16、「値段据え置き」でも“買わない”理由。来春の「廉価モデル」まで待つべきか

やはり拭えぬ“高止まり”感

 機能やデザインをアピールしたいAppleには申し訳ないが、日本の消費者が一番関心を持っているのはやはり、新型iPhoneの価格設定だろう。  歴史的水準の円安が始まった2022年以来、Apple製品をはじめとする電子機器類は買いにくい状態が続いている。今回も値上げを心配していたAppleユーザーが多いことと思うが、iPhone 16シリーズは、昨年リリースされた15シリーズと変わらない価格となった。PS5など他社製品で値上がりがニュースになっているなか、“お値段据え置き”には安堵の声が聞かれている。
iPhone16

やはり円安で買いにくいiPhone 16だが、Appleの企業努力の結果“値段据え置き”に収まった

 アメリカ価格で799ドルのiPhone 16(標準モデル)は、日本価格だと税込み124800円となる。これを税抜き価格に直すと113455円で、Appleは1ドル=142円を前提に商売していることがわかる。  これまでのAppleは、実勢以上の円安を前提にした価格を設定することが多かった。しかし発表時点での為替レート(142円33銭)と比較すると、今回のiPhone 16はわずかながら円高に振った値段であり、日本の消費者にとってはありがたいところだ。  それでも、12万円オーバーのスマートフォンを“安い”と言うのは難しい。iPhoneには廉価モデルの「iPhone SE」があり、来年春のモデルチェンジが有力視されているため、それを待つという選択も賢明だろう。どうせ「Apple Intelligence」の日本語解禁は来年なのだから。

クラウドか、オンデバイスか

 最後に、AppleとAIの“次なる葛藤”を考えて終わりたい。  クリエイター層への配慮から、これまで生成AIへの言及を避けがちだったAppleも、いよいよAI方面に舵を切った。しかしその先には、またしても難しい分かれ道がある。「クラウドか、オンデバイスか」という二択である。  たとえばChatGPTは、古いスマホや格安のノートPCからでも問題なく利用できる。世界のどこかにある巨大なクラウドサーバーが、AIに必要な計算を担って、その計算結果を返してくれるからだ。  このやり方(クラウドコンピューティング)は合理的だが、機密保持に不安があるほか、アダルト関連の生成に制限がかかるなどの理由から、一部では自宅のPCで生成AIを動かす「ローカル生成」も試されている。  最新のiPhone 16は、オンデバイスで(スマホ内だけで)生成AIを実行できる性能を有している。しかしAppleは同じ発表中に、「Private Cloud Compute」と銘打ち、クラウドサーバーでのAI処理もやると宣言した。それならばユーザーが持つのは、古いiPhoneとか、次に発売されるiPhone SEでも十分なはずで、どうもちぐはぐだ。
iPhone16

ライバルであるGoogle Pixelシリーズは、オンデバイスで動作する生成AI「Gemini Nano」をすでに搭載している

 もっとも、手頃なオンデバイスAIと強力なクラウドAIを賢く使い分けるのなら、iPhone 16の性能が無駄になるわけではない。日本市場の本命であるiPhone SEのリニューアル後も、iPhone 16は“憧れのAIスマホ”としての存在感を放つものと予想する。 <TEXT/ジャンヤー宇都>
「平成時代の子ども文化」全般を愛するフリーライター。単著に『多摩あるある』と『オタサーの姫 〜オタク過密時代の植生学〜』(ともにTOブックス)ほか雑誌・MOOKなどに執筆
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