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藤田菜七子「電撃引退」による競馬界の影響は…。女性騎手「ドミノ倒しの危機」の可能性も

 ダービー馬ドウデュースが見せた圧巻の末脚にファンがどよめいた。  10月27日、東京競馬場で行われた第170回天皇賞(秋)は、武豊騎手が騎乗した2番人気のドウデュースが最後の直線で他馬をごぼう抜き。後方2番手から上がり3ハロン32秒5の驚愕の切れ味を発揮すると、並み居る強豪馬をあっという間に差し切った。  今年3月に55歳となった武騎手だが、この秋は秋華賞2着、菊花賞3着、そして天皇賞(秋)優勝とまさに絶好調。いずれも人気を上回る着順に愛馬を導いているだけにその価値は高い。

“競馬界のアイドル”の「電撃引退」から3週間…

藤田菜七子

写真/橋本健

 武騎手が日本競馬界の“顔”となったのは元号が平成に変わった頃だった。その後、何人かの若手が“ポスト武豊”候補と呼ばれたが、後継者は今なお現れていない。  そんな日本競馬界において、武騎手に次ぐ認知度を誇っていたのが藤田菜七子騎手ではないだろうか。正しくは、10月11日付で騎手免許を取り消されているため、藤田菜七子元騎手である。  菜七子元騎手は、“競馬界のアイドル”として、ルーキーイヤーの2016年以降、多くの話題を振りまいてきた。1年目は6勝に終わったが、2年目の17年から14勝→27勝→43勝と着実に実績を重ね、18年にはJRAの女性最多勝利記録を樹立するなど、順風満帆の騎手生活を送っていた。  ところが落馬による骨折などもあり、成績は徐々に低迷。19年の43勝をピークに、35勝→14勝→8勝→13勝と、成績は下降の一途を辿った。  そして9年目となった今年は、6月を終えて4勝と自己ワーストに並ぶペースだったが、7月にJRA職員の男性との結婚を発表すると、直後に5勝目をゲット。公私ともに充実の時を迎えると思われた。

同情からバッシングへ

 ところが、10月上旬、“文春砲”が直撃する。『文春オンライン』が菜七子元騎手によるスマホの不正使用疑惑を報じたのだ。 『文春オンライン』によると、2023年4月ごろまでに菜七子元騎手は複数回にわたって調整ルームの居室内に スマートフォンを持ち込み、外部と通信していたという。JRAの事情聴取に対して、菜七子元騎手がこの事実を認めたため、騎乗停止処分が下された。  そしてその後、菜七子元騎手は急転直下の引退を表明。一時は師匠の根本康弘調教師が、「菜七子は泣きながら引退届を書いていた」と明かし、ファンの同情を誘った。ところが、前年のJRAの事情聴取に対し、菜七子元騎手は虚偽申告をしていたことが発覚すると、“同情”は瞬く間に“バッシング”へと形を変えた。  まさにあっという間に競馬界を去ってしまった菜七子元騎手だが、9年近いキャリアの中で残した功績は決して小さくない。重賞勝利など騎手としての実績はもちろん、彼女の姿に憧れを抱いた女性騎手が次々と競馬界の門を叩き、ここ数年で一気に増加。JRAの現役女性騎手の数は6人に上る。

6人の女性騎手の“厳しい現在地”

 しかし、その女性騎手たちも決して順風満帆というわけではない。一昨年にデビューした今村聖奈騎手は、1年目に重賞勝利を含む51勝を挙げる快進撃を見せたが、昨春のスマホ問題を機に失速。2年目に勝ち鞍を25に減らすと、今年はケガなどもあったとはいえ、いまだ4勝にとどまっている。騎乗回数自体も激減しているのが現状だ。  逆に昨春のスマホ問題を発奮材料にしたのは、今村騎手の1年先輩にあたる永島まなみ騎手だった。3年目の昨年は、自己最多を大きく更新する50勝をマークしてブレイク。すると、今年6月のマーメイドSで重賞初勝利を飾り、“最も勢いに乗る女性騎手”として注目されている。  ところが、7月末まで25勝していた永島騎手も、8月以降は3か月間で3勝にとどまり、10月に至っては58回の騎乗で勝利なし。22年9月以来となる月間未勝利の屈辱を味わった。  また、永島騎手や今村騎手に限らず、伸び悩んでいる女性騎手も少なくない。有望株の一人、小林美駒騎手は先週末にケガから復帰したばかりで、同期の河原田菜々騎手は約3か月間も白星から遠ざかっている。  古川奈穂騎手は今年の勝率が昨年比で半減。ルーキーの大江原比呂騎手は4勝を挙げているが、体重調整に苦労し、複数回の過怠金を科されている。菜七子元騎手に憧れてこの世界に入った女性騎手たちも、決して順調とはいえない状況だ。
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“菜七子ルール”が逆差別になる可能性も
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競馬歴30年以上の競馬ライター。競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。競馬情報サイト「GJ」にて、過去に400本ほどの記事を執筆。

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