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「いっしょに暮らそう」突然現れた見知らぬ老人の正体は…怒りと絶望に苛まれた40代男性の思い

 ある日突然、見知らぬ誰かから「いっしょに暮らそう」などと言われたら、驚きしかないだろう。そのうえ自分には身に覚えがまったくないのに、相手が自分のことをペラペラと話しはじめたとしたら要注意かもしれない。
老人

※写真はイメージです

働く母を助け、家計を支えた

 前田衛二さん(仮名・40代後半)は、物心がついたときから母親と2人だけで慎ましく暮らしてきた。母は朝から夜遅くまで働いていたが、衛二さんが熱を出すなど体調を崩すたびに仕事を休まなければいけないことも多く、職を転々とするしかなかったとか。 「保育園や小学校の頃に連日同じ服を着ていたり、お風呂に入れずフケが多くなったりして同級生から笑われるようなことはありました。正直ツライ思いをしたこともありますが、後ろ指を指されるようなことはせず、まっとうに生きてきたつもりです」  そんな衛二さんは、高校生になるとすぐにアルバイトを開始。給料のほぼ全額を母に渡して家計を助けた。そういった事情もあって母はアルバイトのみでやり繰りできるようになり、衛二さんの就職後は3時間ほどの短時間パートに転身。

自分の名前を呼ぶ見知らぬ初老の男性

「そして貯金できるほどに落ち着いていました。付き合っていた彼女もいましたが、母のことを考えるとなかなか踏ん切りがつかない。でも彼女は文句ひとつ言わず、『もうすでに婚期は過ぎているから』と笑って待っていてくれました」  そして衛二さんが40代後半になったとき、見知らぬ初老の男性が突然目の前に出現。衛二さんの名前を呼びながら親しげに肩を撫でてきて、「いっしょに暮らそう」と言いはじめたのだ。仕事帰りに、自宅のアパートから出てきた男にそう言われ、たじろいだといいます。 「知らない初老の男性にそんなことを言われ、まずはその人が認知症ではないかと疑いました。けれどその男性は、僕の名前を呼んでいる。しかも、かなり親しげ。記憶を手繰ってみましたが、その男性の顔にも話し方にもまったく覚えがありません」  これほど親しく話しかけてくれているのに覚えていないなんて……と、自己嫌悪に陥りかけたとき、自宅アパートから母が出てきました。そして2人を見るとニコニコしながら歩み寄り、「これ、忘れていたわよ」と競馬新聞をそっと手渡す。
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「妄想の中で何度殺したかわからない」
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ワクワクを求めて全国徘徊中。幽霊と宇宙人の存在に怯えながらも、都市伝説には興味津々。さまざまな分野を取材したいと考え、常にネタを探し続けるフリーライター。Twitter:@natukawanatumi5
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