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「いっしょに暮らそう」突然現れた見知らぬ老人の正体は…怒りと絶望に苛まれた40代男性の思い

「妄想の中で何度殺したかわからない」

「しかもその競馬新聞には赤マルが付いていて、丸められた跡もありました。それを見た瞬間、言い知れぬ不安が広がったのです。そして母の口から、『家族でいっしょに暮らしたい。ヨリを戻したいって数か月前に連絡があってね』という驚きの言葉が飛び出しました」  母は「もう少ししたら、あらためて紹介しようと思っていたんだけど。まさか鉢合わせするとはね」なんて呑気に笑っている。父親がギャンブルにのめり込み、借金まみれで失踪したことは母から何度も聞いていた。けれど、幼かった衛二さんには父の記憶がまったくない。 「それでも、僕が就職するまでは、父の保証人になった母の借金返済に追われてずっと生活は苦しかったです。母は毎日のように早朝から深夜近くまで働いて身体もボロボロになっていましたし、僕は妄想のなかで父を何度殺したかわからないぐらい憎みました」  それなのに、苦労の原因をつくった男が約40年ぶりに現れ、ヘラヘラ。しかも母親が、いままで見せたことがないような表情をし、その男の隣で微笑んでいる。しかも、これまでのことを謝罪もせず、「いっしょに暮らそう」などと言ってきたのだ。

貯金を使い果たしていた母とも絶縁

老人

※画像はイメージです

「許せるはずがありません。僕が『家には入れない』と言うと、しばらくは『そんなこと言わずに』などと言っていましたが、そのうち家の外で大騒ぎ。『親に向かってその態度は何だ?』『お前に選択権はない』と叫び散らかしていました」  その騒ぎに近所の人たちが出てくると、「チッ!」と舌打ちをしてどこかへ去っていったというが、それ以上にショックを受けたのが帰宅後。なんと母は、数か月前にヨリを戻した父にせがまれ、これまでに衛二さんとともに貯めてきたお金をほぼ使い込んでいたのだ。 「母の老後を思って貯めてきたお金もほぼ使い果たし、何をやっているんだという感じです。そして、約40年かけて築いてきた信頼関係を母にアッサリと裏切られたこともショックでした。僕は母に絶縁を言い渡し、その後は1人暮らしをしています」  そしていまは、彼女との結婚も視野に入れ、あらたに貯金を開始。今回のことを話した元警察官の友人から「記憶にもない古い家族や友人の訪問は、お金や勧誘などが目的のことも多い」とアドバイスを受け、気を引き締めているという。十分に気をつけたいものだ。 <TEXT/夏川夏実>
ワクワクを求めて全国徘徊中。幽霊と宇宙人の存在に怯えながらも、都市伝説には興味津々。さまざまな分野を取材したいと考え、常にネタを探し続けるフリーライター。Xアカウント:@natukawanatumi5
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