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「お客様すみません!ホテルの者ですが」女性従業員がドアを叩いて“客に助けを求めた”ワケ

電話はキッチンに置いてきてしまった

電話子機「まさか、こんなハプニングが!?」と、パニックになる天野さんだが、さらに追い討ちをかけるように困った事態が発覚した。 「いつもならメイクスタッフと連絡を取るための電話の子機を必ず持ち歩いているんですが、そのときは電話も持っていませんでした。  フロントにお客様から電話があったとき、料理を作っている最中だったのでそのまま電話をキッチンに置いてきてしまっていたんです。『あれ? これ……もしかして詰んでる?』と、為す術もない状況に青ざめていくのが自分でもよくわかりました。  部屋に閉じ込められた状況では、ネガティブなことばかり考えてしまいましたね。他のお客様から注文や問い合わせの電話が鳴りっぱなしかもしれない。ヤバい……。かなりのクレーム案件になる。これは絶対クビになる……と震えていました」  八方塞がりの状況に大慌ての天野さんだったが、ある打開策を思いついた。 「客室の電話はフロントにしか繋がりませんが、フロント部屋にメイクスタッフがいれば、もしかすると電話に出てくれるかもしれないと考えました。  でも、部屋のテレビを操作して、各部屋の状態がわかるモニターに切り替えたところ、清掃中の部屋が5つも表示されていて…これではしばらくは清掃でフロントには戻らないでしょうし、手も足も出ない状況は長い時間続きました」  絶望的な状況だが、天野さんがしばらくモニターを見ていると、天野さんがいる部屋の真向かいに位置する部屋の表示が、「利用中」から「料金清算中」に変わったという。「これはチャンス!」と天野さんは心の中で叫んだそうだ。

大声で客に助けを求めるハメに

「このホテルでは、お客様の清算が終われば部屋の状態は“退室待ち”に切替わり、さらにお客様がドアを開ければ“清掃待ち”に変わるシステムなんです。  “清掃待ち”に表示が切替わるタイミングを狙って、私はドアを叩きながら『すみませーん! 向かいの部屋にいるホテルの者ですー! お客様ー!』と声を振り絞って必死に叫びました。それはもう祈るような気持ちで、ただがむしゃらに(笑)。  すると、奇跡的にお客様から反応があり、私はドア越しに『メイクスタッフを呼んでほしい』と叫び伝えました。そのあとお客様のおかげで無事に部屋を出ることができました。  鍵を開けてもらったメイクスタッフには爆笑され、電話を待たせてしまっていたお客様には平謝りし、一応店長に報告したところ笑われながらも説教されて……。散々な1日となりました」  ――せわしなく働くラブホテル従業員のパニックぶりが垣間見られるハプニングエピソードだった。
編集プロダクションA4studio(エーヨンスタジオ)所属のライター。興味のあるジャンルは映画・ドラマ・舞台などエンタメ系全般について。美味しい料理店を発掘することが趣味。
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