更新日:2025年04月23日 21:25
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中森明菜、16年ぶりのライブ復帰も歌には“一抹の不安”が…感じた違和感と再出発のヒント

16年ぶりのライブ復帰も…

 中森明菜が16年ぶりにライブ復帰しました。4月19、20日に大分県で開催された『ジゴロック2025~大分“地獄極楽”ROCK FESTIVAL~』に出演し、小室哲哉とのコラボで「愛 撫」や「TATTOO」などのヒット曲を披露しました。年末に向け、紅白への待望論もまた加熱しそうです。  しかし、そこには一抹の不安もあります。ニュース映像やネットに上がっている動画を見ると、あれ?という感じだったからです。確かに、復帰そのものは喜ばしいことです。けれども、いまの盛り上がり方は、もともとのネームバリュー、そして不利益を被った過去に対する同情的なエールによるものであることは否めません。  音楽的な充実度をよそに、サイドストーリーが復活の期待値を高めていることは、果たしていまの中森明菜にとってプラスになるのでしょうか?

中森明菜の歌はどう変化したのか

 改めて今回のパフォーマンスを見ると、かつての鋭さやきらめきはありません。音程は総じてフラットし、リズムにも乗り遅れている。頭で思い描いたものと、実際の発声とのズレから生じる重さがある。同世代の歌手のことを思えば、年齢的な衰えというには早すぎます。むしろ、単純に歌に関わる体の動きがうまく連動していない印象なのです。  昨年話題を呼んだ自身のヒット曲のジャズアレンジも、そうした事情からだったのでしょう。しかしながら、それは成熟したシンガーの落ち着きを際立たせるよりも、脆弱さを壊さないための予防的措置のように聞こえました。  現状のまま本格復帰をしたとしても、思い入れのあるファンでもない限り、受け入れにくい状況にあるのではないか。それが、率直な感想です。
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中森明菜のジャズアレンジに感じた違和感
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音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4

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