更新日:2025年06月06日 09:36
ニュース

天下一品「大量閉店」は人気つけ麺チェーン店の“離脱”が原因か。「こってりが珍しくなくなった」厳しい現状

昭和46年に京都の地で創業し、今年55年目を迎えた天下一品。 全国で209店舗(2025年5月29日時点)を展開している人気ラーメンチェーンとして知られるが、首都圏で展開する約3割にあたる10店舗を6月末日に閉店すると発表された。 熱烈なファンが多く今後を心配する声があるが、閉店理由が定かでなく真実がわからない状態だ。 憶測が飛び交っており、現時点では推測にすぎないが、「こってり味という専売特許的な立ち位置に似た商品を扱う店が増え、唯一無二ではなくなった」商品面、「加盟店側の経営戦略の事情を反映した事業展開」などの運営面、2つが原因ではないかといわれている。 首都圏は特にラーメン激戦区だけに過去の栄光だけでは生き残りが難しそうだ。今回は、その閉店要因を外部環境面・内部環境面・運営面の視点から探ってみたい。
天下一品

J_News_photo – stock.adobe.com

既存チェーンの拡大と新規参入でラーメン市場はレッドオーシャンに

ラーメン市場は、物価高騰や競争激化などで倒産する店が相次ぎ、経営環境が厳しくなっている。 経済産業省によると、ラーメン市場の規模は推計6000億円。店舗数は約18,000店舗あり、その半数を個人店が占めているものの、その個人店の廃業が増加傾向とのことだ。 その一方で、資本力があるラーメンチェーンは、まだまだ成長余地があると判断し、未開拓市場に出店攻勢をかけている。既存事業者にとどまらず、異業態からの新規参入も増加中だ。現在のラーメン市場の参入状態を見てみよう。 まず、専業チェーンの魁力屋は、700店舗構想と台湾進出を打ち出すなど健闘している。国内の熾烈な競争で蓄積したスキルとブランド力をもって海外市場も狙っている。 焼肉きんぐをコア事業とする物語コーポレーションの成長ブランド、丸源ラーメンは、5月に224店舗目を出店した。 ニーズが多様化する中、単一ブランドで全てのニーズに対応するのは限度があるが、バリエーション豊かなメニューの提供で家族連れを中心に支持され順調に店舗数を伸ばしている。

牛丼チェーンの吉野家も本格参入

牛丼チェーンの吉野家も、飽和状態にある牛丼事業への依存度を低下させるべく、成長分野と期待されるラーメン事業へ本格参入した。「キラメキノトリ」など複数ブランドを買収し、現在129店舗(国内95店舗、海外34店舗)を運営している。 ラーメン関連のM&Aは昨年5月にもラーメン店向けに麺・スープを製造する会社を買収し、ラーメン事業の基盤づくりに力を入れている。 新社長に就任した成瀬哲也氏は、ラーメン事業の売上を2029年度に現在の5倍である400億円に伸ばし、店舗数を500店舗に拡大する方針を打ち出し、業態ポートフォリオの見直しを進めているようだ。 このようにラーメン市場は、倒産や廃業が相次ぐ中で新規参入も多い。これまでラーメン事業を展開していなかったが、自社のポートフォリオを見直す中、成長余地があると判断してラーメン事業を標的とし、リスク分散と収益機会の最大化を目指している。 守る既存事業者と攻める新規参入者の戦いの構図も鮮明だ。この競争の激化も、天下一品の成長が鈍化する一因といえる。
次のページ
天下一品の存在意義が薄れたワケ
1
2
3
飲食店支援専門の中小企業診断士・行政書士。自らも調理師免許を有し、過去には飲食店を経営。現在は中村コンサルタント事務所代表として後継者問題など、事業承継対策にも力を入れている。X(旧ツイッター):@kaisyasindan
記事一覧へ
【関連キーワードから記事を探す】