客単価1200円を超えたCoCo壱番屋の「高級化」に客離れが止まらず…“8か月連続前年割れ”の苦境に打開策はあるか
帝国データバンクによると、「カレーライス物価指数」がついに400円を超えた。これはカレーライスを家庭で調理する際に必要な原材料や光熱費などの価格(全国平均)をもとに算出されるもの。2024年度の平均は1食365円だったので、食卓への大きな影響を感じさせる。
家庭で簡単にできる料理なのに、これだけ肉、野菜、コメ、水光熱費が上がっていると作る意欲が低下してしまうだろう。
カレーは人気食だけに食べない選択にはムリがあるが、だからと言って外食に行けばもっと出費が増えるから難しいところ。
このコスト高にカレーの専門チェーンの「CoCo壱番屋」(以下、ココイチ)も、かつてない経営環境で対応に苦慮している。
「ココイチ」は、カレー店として最大規模のギネス世界記録に認定されたチェーンである。カレー市場では他社に圧倒的な差をつけて首位の座に君臨し、絶対的な存在感がある。
値上げで高くなったと実感しながらも、ココイチのカレーが食べたいというコアユーザーは多い。大概のお客さんはカレーだけでは物足りないから、トッピングやサラダを追加するので、今では平均客単価が1,208円まで上昇。
その結果、行きたくても気軽に行けない店となっており、客数の減少が続いている。客単価の上昇で、その時の売上が維持・向上できても、ブランドロイヤリティの高いお客さんが減ることは、成長性・将来性から見ると不安である。
顧客生涯価値(LTV、顧客から生涯にわたって利用してもらって得られる利益)の増加に向けた工夫が重要だ。
また、人気のカレー市場には新規に参入する他業態店が増えている。例えば、牛丼御三家の吉野家・松屋・すき家はカレーライスの価格を500円程度から用意しており、需要が高まる夏場に向け、メニューも拡充している。
ファミレス業態も含め競争が激化し、限られた市場の奪い合いに専門店としての差別化を明確にアピールしなければならない状態だ。
ココイチの店舗の売上(25年2月期決算)は1,153億3,400万円(内、国内店舗売上968億1,900万円)である。
運営元の株式会社壱番屋の売上は加盟店への食材卸事業を中心に610億600万円(前年比+10.6%)、営業利益49億2,500万円(前年比+4.5%)、営業利益率8.1%(前年比-0.5%)となっている。
この物価高騰に対応する為に、値上げを実施しているが、改定頻度と上げ幅率の高さから、徐々にお客さんがついてこれなくなったのではないかと推察する。
22年からの値上げを見ると、22年6月(ベースカレー平均+5.9%、トッピング平均+3.8%)、22年12月(ベースカレー平均+7.4%、トッピング平均+5.4%)の価格を改定したが、客単価・客数指数(22年3月=100)を見ると、その時は値上げによる客単価の上昇に対し客数の影響はあまりなく、乖離幅も軽微だった。
しかし、直近の24年8月(ベースカレー平均+10.5%、トッピング平均+13.5%)と上げ幅が大きかったこともあり、客離れの動きが顕著だ。それらの要因により、翌月の9月から8か月連続で客数が前年割れしており今も続いている。
それでも客単価の上昇が大きく貢献し、売上は伸ばしているが、行き過ぎた客単価アップと客数の減少は中長期的な視点では不安材料ではなかろうか。

yu_photo – stock.adobe.com
客単価が1200円を超えたココイチ
株式会社壱番屋の業績と財務の状態は
飲食店支援専門の中小企業診断士・行政書士。自らも調理師免許を有し、過去には飲食店を経営。現在は中村コンサルタント事務所代表として後継者問題など、事業承継対策にも力を入れている。X(旧ツイッター):@kaisyasindan
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