「うまトマ」大ヒットも…“高級化”路線で「牛丼メインじゃなくなった」松屋が“増収減益”に苦しむワケ
牛丼御三家の一角を占める松屋。
吉野家とすき家とは一線を画す商品戦略で、卓越した商品開発力を武器に、あらゆる供給で需要を喚起している。
松屋は牛丼よりも、豊富な定食やカレーを売りに差別化を図っており、新メニューも頻繁に販売し飽きのこない店づくりには定評がある。
以前は価格でもお値打ち感があったが、今は物価高騰や人件費上昇で低価格を維持できなくなっている。定食メニューも800円〜1000円が中心価格帯だ。
もちろん、これらは松屋に限ったことではないが、「高くなった」と感じられるのは仕方ない。「値上げして店側が儲けているのでは?」と言う人もいるが、実際はそうではない。
外食店を取り巻く環境は、雇用や所得環境の改善を背景とした個人消費の改善やインバウンド需要が拡大しつつある一方で、原材料、人件費、エネルギー単価の高騰が足枷となり、依然厳しい状況が続いている。
そういった中、松屋は守りに入れば成長なしとの考えから業容の拡大に取り組んでいる。
牛めし業態80店舗、とんかつ業態11店舗、鮨業態6店舗、海外・その他の業態13店舗の合計110店舗を出店。その一方で、不採算店舗であった牛めし業態9店舗と海外1店舗の合計10店舗は撤退。
今年度末の店舗数はFC店を含め、1,365店舗(うち国内FC5店舗、 海外23店舗)となった。
業態別内訳は牛めし業態1,106店舗、とんかつ業態195店舗、鮨業態17店舗、海外・その他の業態47店舗となっている。
新たな発想による新商品の提案はSNSを通じて話題性を発信し、既存店ベースで客数(前年比+6.6%)、客単価(同+8.2%)と伸ばしている。
主な実施メニューは「いくら丼」「3種ソースのグラタンハンバーグ」「水煮牛肉~四川風牛肉唐辛子煮込み~」「ポーランド風ミエロニィハンバーグ」、「リトアニア風ホワイトソースハンバーグ」「サムギョプサル風 極厚豚バラ焼肉定食」など、異国の本場料理を含めた多種多様な新メニューでお客さんに関心や刺激を与え来店動機を高めている。
その結果、売上は前期比20.9%増の1,542億2,300万円と著しい伸長度を見せている。

Tipstour – stock.adobe.com
松屋フーズの現況は
新商品の活発な提案で来店動機を高め売上は増大

期間限定で販売中の「国産雪国育ち厚切りトンテキ定食シャリアピンソース」1480円(税込)
飲食店支援専門の中小企業診断士・行政書士。自らも調理師免許を有し、過去には飲食店を経営。現在は中村コンサルタント事務所代表として後継者問題など、事業承継対策にも力を入れている。X(旧ツイッター):@kaisyasindan
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