「万引きに頭が支配されていた」窃盗症に苦しんだ43歳女性の告白、パワハラと性自認の悩みが引き金に
「万引きをしていた頃は、パトカーとすれ違うとビクビクし、電話が鳴ると警察じゃないかと疑い、万引きに頭が支配されていることをAIで可視化できるようになったらどうしよう。そんなことばかり考えていました」と語るのは、依存症の1つである「クレプトマニア(窃盗症)」の高橋悠さん(43歳)だ。
アメリカの精神医学会が取りまとめた精神疾患の診断基準(DSM-5)によると、クレプトマニアは、以下の特徴を持つ精神疾患とされている。
1.個人的な使用や金銭的価値のためではなく、物を盗む衝動を抑えられない
2.窃盗前に緊張感が高まり、窃盗時に快感や満足感を得る
3.窃盗行為は怒りや報復、妄想や幻覚に基づくものではない
4.他の精神疾患(例: 素行障害、躁病エピソード、反社会性人格障害)では説明できない
悠さんの場合、「1.個人的な使用のため」の窃盗だが、実際には、1を満たしていなくとも広義のクレプトマニアとされる。
現在は、被害弁済を終え、盗ることをやめて6年が経つ。今では、同じように、窃盗症に悩む人たちのメール相談にのったり、自助グループを運営し、スリップ(もう一度、盗ってしまうこと)を予防している。
悠さんは、小学生の頃から、性自認(自分の性別をどう認識しているか)が、男性寄りのXジェンダー女性。父は一見、優しかったが、些細なことで不機嫌になることもあり、人の顔色を窺うような子に育った。誰にも相談できない悩みが、後に盗癖につながっていった。
「小学校の頃は、男の子のようでした 。小学校高学年になると、第二次性徴期を迎え、女性らしい体つきになります。それが嫌で、小学6年の冬から過剰なダイエットをしました」
そのうち、ダイエットでは足らず、過食嘔吐を繰り返すようになる。悠さんが小~中学生の頃には、まだ「摂食障害」という言葉はなかった。体重が減っていき、中学1年生の冬には入院するまでになる。
「摂食障害の中には女性的な体型になることを嫌う人がそれなりにいて、大半は大人になりたくないというものですが、私は違いました。私は、大人になりたくないのではなく、女になりたくなかった。生理があること・女性的な体つきになることに拒否感がありました」
そんな悠さんは、今でも痩せている。摂食障害は、社会人になってからも続いた。
だけど、過食嘔吐は家にいるときだけで、高校・大学・専門学校は普通に通学していた。セクシャリティの問題への対応方法として過食嘔吐を利用していた。仕事は好きなものを選びたいと、大学卒業後は理学療法士の専門学校に進学した。専門学校卒業後は、厳しい病院に就職し、職場近くで1人暮らしを始めた。

クレプトマニア 高橋悠さん(43歳)
誰にも相談できない悩みが、後に盗癖に
体が女性的に変化するのが嫌だった
ライター・原作者・あいである広場編集長。立教大学経済学部経営学科卒。「認知症」「介護虐待」「障害者支援」「マイノリティ問題」など、多くの人が見ないようにする社会課題を中心に取材する。文春オンライン・週刊プレイボーイ・LIFULL介護などで連載・寄稿中。『認知症が見る世界』(竹書房・2023年)原作者
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高橋悠さんが運営する
「クレプトマニア(窃盗症)当事者によるサイト クレプトマニアからの脱却」
https://kleptomania-dakkyaku.com/
当事者からのメール相談にも応じている
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