ユーロ不和で日経平均の下値抵抗線は7800円
―[欧州政治の大逆流が始動]―
マネーな人々 今週の銭格言
【選者】政治経済学者 植草一秀氏
日本株価反騰開始のシグナルとして、ユーロの反発を指摘。実際、ユーロとともに株価も反転上昇した。ところが、ここに来てギリシャ救済の前提である緊縮経済政策に逆風が吹いている。それが日本の株価下落の再燃に繫がりそうだ。
◆欧州政治の大逆流が始動! ユーロ下落が再び強まり、日本株価反騰の機会消失か【後編】
←【前編】はこちら 「ユーロ下落で日本株価反騰の機会消失か」
統一通貨ユーロを維持するには、ドイツをはじめとした経済大国が資金支援し、財政危機に直面している国が緊縮経済政策を実行することが必要だ。だが、この基本となる枠組みに、欧州各国の国民が政府に疑問を投げかけている。
ドイツ国民は「ギリシャのために、なぜドイツが資金を負担するのか」を、ギリシャ国民は「なぜユーロに留まるために、生活苦に繫がる緊縮財政政策を強要されねばならないのか」を疑問に感じている。
ユーロを統合して、アジアや米国に対抗できる経済的に「強い欧州」をつくりたいと考えるのは、大資本や経済を支配する富裕層である。これに対して、一般庶民は日々の生活に追われ、ユーロ統合や産業競争力などは眼中にない。ギリシャがユーロから離脱すれば再び混乱が生じるが、それでも元の貧しくても精神的にゆとりのある生活を一般庶民は求めている。
日本の増税論議にも通じるが、一部の官僚と大資本は結託して政策を強硬に推し進めようとする。だが、主権者である一般庶民の目線を忘れると大きなしっぺ返しを食らう。それが今の政治修正圧力が生まれている背景と言える。
欧州政治の混乱は長引く可能性が出てきた。そうなるとユーロの基調は弱く、株価の反騰は短期で終了することになる。さらに、’13年は米国の緊縮財政が強化される。それに向けた内外経済の冷え込みを警戒する必要があるだろう。
【今週の数字】
日経平均株価の下値抵抗ライン
7800円
’08年以降、株価の動向を読み解くカギとなっているのが、実はユーロ/円の為替レートの動き。欧州政治情勢の急変でユーロ安に向かえば、同じ値動きをする日経平均株価の下落リスクは高まるばかりだ
【植草一秀氏】
シンクタンク主席エコノミスト、大学教授などを経て、現在はスリーネーションズリサーチ(株)代表取締役。ブログ「植草一秀の『知られざる真実』」も人気。著書に『消費増税亡国論』(飛鳥新社)
『消費増税亡国論』 植草一秀が野田政権を切る! |
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