「昔ながらのアダルトグッズ」が静かなブームに!?
―[山田ゴメス]―
TENGAに代表される「ハイセンスなアダルトグッズ」がトレンドと叫ばれ久しい昨今だが、そんなカジュアル化の波に逆行する、もうひとつのムーブメントがささやかながら熱を帯びはじめているのを、皆さんはご存知か? そう、 先祖帰りしちゃった、いわゆる「昔ながらのアダルトグッズ」が息を吹き返し、静かなブームを巻き起こしているのだ。
右の写真にあるのは、今年夏に発売されたばかりの電動二又バイブ「Karina(カリーナ)」である。どこが売りかってえと、まずカリの部分にこだわってみたらしい。
「カリにこだわった、サイズよりカリの段差を重要視するバイブ」とのキャッチコピー。具体的には、いくつかの小さなシリコンボールがカリ周辺に散りばめられており、スイッチを入れると、それらが複雑に動き出し、膣内を刺激するという。たいがいの素人の女性が、おそらく一生出会うはずのないであろう「真珠入りチンコ」を仮想体験できる、というフレコミだ。
「メルヘンな見た目とは裏腹に…」と、クリトリスに当たるミニバイブの部分はクマちゃん仕立て。エロさのなかに可愛さをも取り込んだ、なにげなくも心憎い仕事がキラリと光る。
そして、もっとも特筆すべきなのは、この商品が女性の手によって開発されたものであること。つまり、「女性自らが自らの性器で試行錯誤を繰り返して生まれた、女性が本当に気持ちいいと感じる、女性のためのバイブ」ってなわけだ。
……と、まあ、できうるかぎりの提灯記事を書いてみた。が、正直いって、心底「画期的!」と唸るべき特徴は、残念ながら一つも見当たらない。このままだと、あまりに内容が薄すぎるので、とりあえず“開発者”とされている「ミカコさん」に、発売元の「ワイルドワン」を通して話を聞いてみることにした。すると、こんな回答が返ってきた。
「最近は、機能性ばかりを重視した、しかもおしゃれでスクエアなデザインのアダルトグッズが、ドンキとかでもカップルで堂々と選べる時代ですよね? バイブひとつとっても、まるで「マッキントッシュのオプション備品ですか?」みたいな、シュッとしたイメージで(笑)。それはそれで素晴らしいことだと思うんですけど、一方でアダルトグッズを使用するという行為があまりにカジュアルになりすぎて、情緒の面が薄くなってきているのでは、と危機感をおぼえたんです。やっぱりカップルで、あるいは独りでバイブと戯れるときは、『こんないやらしいモノを使ってるワタシって……』みたいな、淫猥な背徳感が欠かせないじゃないですか。だから、あえてこのようなノスタルジックなデザインのモノを、今風に少しだけブラッシュアップして提案してみたんです」(ミカコさん)
TENGAを使って、清潔で高度かつ、スマートなオナニーも悪くはないが、たまにはコンニャクも使ってみたい……的なメンタリティーか?
イマドキの若い男女が、このような“遊び心”を、この「カリーナ」に見いだすのならば、それはなかなか画期的なアイディアなのかもしれない。これを片手に「使わせてください!」と全裸で土下座する自分の姿を思い浮かべると……。たしかに滑稽でエロティック、ではないか。<取材・文/山田ゴメス>
【山田ゴメス】
1962年大阪府生まれ。マルチライター。エロからファッション、音楽&美術評論まで幅広く精通。西紋啓詞名義でイラストレーターとしても活躍。日刊SPA!ではブログ「50にして未だ不惑に到らず!」(https://nikkan-spa.jp/gomesu)も配信中。現在「解決!ナイナイアンサー」(日本テレビ系列)(http://www.ntv.co.jp/99answer/)に“クセ者相談員”として出演。『クレヨンしんちゃん たのしいお仕事図鑑』(双葉社)も好評発売中!大阪府生まれ。年齢非公開。関西大学経済学部卒業後、大手画材屋勤務を経てフリーランスに。エロからファッション・学年誌・音楽&美術評論・人工衛星・AI、さらには漫画原作…まで、記名・無記名、紙・ネットを問わず、偏った幅広さを持ち味としながら、草野球をこよなく愛し、年間80試合以上に出場するライター兼コラムニスト&イラストレーターであり、「ネットニュースパトローラー(NNP)」の肩書きも併せ持つ。『「モテ」と「非モテ」の脳科学~おじさんの恋はなぜ報われないのか~』(ワニブックスPLUS新書)ほか、著書は覆面のものを含めると50冊を超える。保有資格は「HSP(ハイリー・センシテブ・パーソンズ)カウンセラー」「温泉マイスター」「合コンマスター」など
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