【原発労働の実態】被曝隠し、ピンハネ構造に電力会社は黙認!?
渡辺博之・いわき市議会議員。事故以前から原発の被曝労働や多重派遣問題について追及を続けてきた渡辺議員に、原発労働の実態についてインタビューした。
「上司の命令で鉛の板で線量計を隠したという一件がありましたけど、多くは労働者自らが被曝量を隠してしまうんです」
渡辺議員は、福島第一原発で働いていたある作業員の被曝記録を取り出した。
「これは私が相談を受けたAさんのケースです。Aさんは事故前から原発で働いていた優秀な人なんですが、事故直後から最前線での作業を続けていたところ、5か月の間に被曝量が40ミリシーベルトを超えてしまいました。当時の基準では40ミリを超えれば次の年の4月まで原発で働けなくなってしまうので、20ミリを超えたときに親方に『このまま働いていていいのか』と聞いたら、何とも答えてくれなかった。しかしここで働けなくなってしまったら次の仕事がない。そこで、自ら被曝線量を隠すようになったそうです。線量計をこっそり外して現場に行き、記録上は『被曝ゼロ』の日を何日もつくっていったのです。Aさんだけが特別に被曝量が多いということはありませんから、こうしたことは多くの原発作業員の間でも日常的に行われているでしょう。作業員は解雇されたくないためにどんどん被曝を隠すようになりますし、雇う側も解雇すればまた人を集めなければならないのでそれを黙認する。そのため、その実態がなかなか表に出てきません」
さらに、事故以前から横行している「多重派遣」も、原発作業員の環境を悪くしていると渡辺議員は指摘する。
「これは7月26日に多重派遣を告発した元福島第一原発作業員、Bさんの契約書です。Bさんの場合、契約書や放射線管理手帳には『大和エンジニアリングサービス』という社名が書いてありますが、実際はそのひ孫請けである『前田工業』という会社から給料をもらっていました。日当は約1万1000円。ところが、『大和エンジニアリングサービス』は労働者1人あたり、日当2万4000~2万5000円プラス危険手当を支払っているんです。つまり、間に入った会社がピンはねした結果、Bさんにはその半額以下で危険手当もつかなくなってしまった。Bさんのように多重派遣構造の下層にいる作業員のほとんどは、社会保険などもありませんし、危険手当がつくことも知らない人が多い。そして最前線に送られ、短期間に高線量の被曝をして解雇されていくのです」
⇒【契約書の拡大画像】 https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=276477
多重派遣構造は7次8次請けまで続いているケースもあるという。「大和エンジニアリングサービス」も「日栄動力工業」という会社の下請けだ。
「『発注側の東京電力は1日いくら出しているのか』とある社長に聞くと、『事故前の話だが、東電社員は1人あたり5万円と言っていた』、また別の社長は『10万円と聞いたことがある』と話す。これが末端までいくと、事故後でさえ日当5000円という人も出てくる。1日1万円ピンハネして100人送り出せば、それだけで日収100万円。この多重派遣構造は上にいればいるほど儲かります。事故処理でさらに人員が必要となったため、多くの会社がこれに群がり維持しようとしている。電力会社はこの構造を知りながら黙認してきました。最前線にいる原発作業員の待遇を改善するためには、政府自ら調査して改善させることが絶対に必要です」
●渡辺博之・いわき市議会議員(日本共産党)
共著書に『「最先端技術の粋をつくした原発」を支える労働』(学習の友社)など。http://jcphiro.exblog.jp/
<取材・文/北村土龍>
「被曝線量を隠すことは、特に原発事故以降、多くの作業員の間で行われていると思われます」と語るのは、
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