[ヤンキー魂]こそが復興支援を牽引する
被災地からの「物資が足りない」という叫びに政府よりも早く応えたのは、普段なら「ワル」「チャラい」と呼ばれるような人々だった。危険を顧みず、見返りも求めず、がむしゃらに救援活動に奮闘する姿を追った
困っている人たちのために自ら汗を流して行動する。
それがヤンキー魂だ!
3月26日、”ジャニーズいちの暴れん坊”の異名を持つKAT―TUNのラップ担当・田中聖の車が、東北道を北上した。TV番組で知り合った重い病を患っている少年が、東北関東大震災で被災。彼に会うべく、完全プライベートで訪問し、宮城県多賀城市の避難所で、持参した救援物資を配った。
彼のような”ヤンキー魂”を持った有名人の復興支援が目立つ。浪速乃闘拳・亀田興毅は3月15日に飲料水1万本とグミ1万袋を送付。宮城県でのロケ中に地震に襲われたヤンキールック芸人・サンドウィッチマンも、独自の義援金口座を開設した。また、ヤンキーやギャルに絶大な影響力を持つ浜崎あゆみと安室奈美恵も、地震後いち早くそれぞれ3500万円、5000万円を寄付している。
相次ぐヤンキー系芸能人たちの復興支援活動。しかし、彼らと同等、否、それ以上のスピリットを持った市井のヤンキーも、いち早く独自の支援に乗り出していた。
“ワル”たちの復興支援。不良系格闘技イベント、ギャングetc.
「募金お願いします!」
渋谷の雑踏に立ち、声を嗄らすのは元暴走族総長の中澤達也(31歳)。この日は、自身も出場する不良系格闘技イベント「THE OUTSIDER」のファイターとして募金活動を行っていたが、彼の活動はこれにとどまらない。
福島第一原発3号機が爆発した3月15日。彼は、地元の仲間とともに、八王子市を出発した。物資を持って宮城県仙台市に向かうためだ。翌日なんとか物資を届け、すぐさま情報を収集。第2便を送るために東京に戻った。
「荒浜の海岸に遺体が並んでいた光景はとても言葉にできない。とにかく自分の命があることに感謝して、自分にできることをやるべきだと思いました。西東京のワルのネットワークを使って、地元のコンビニやスーパー10か所以上に支援物資受付所を設置してもらい、物資をかき集めたんです」
2tトラック4台、ワゴン2台に物資を詰め込み、20日、同県気仙沼市に届けた。
「個人の物資は受け付けないというのは政府が決めた話でしょ? 俺たちは小さな力の集まりだから、大きな力が届かない場所に届ける。俺らみたいな人間だからこそできることがあるはず」
動いた不良系格闘技団体はほかにもある。北海道の不良格闘技団体「道志」の代表・三浦弘人は、「1万人に豚汁炊き出しプロジェクト」を立ち上げ、避難所に入れない住民を支援。同じく不良系格闘技「野蛮一族」の代表・吉田武生も地元のネットワークで、水や食料、紙おむつを集めた。
(文中・敬称略)
大量のガソリン携行缶を用意して現地に向かった中澤。
元暴走族のヘッドだが、現在は俳優、格闘家として活躍
炊き出しプロジェクトはすでに第3陣を数えるが今後も継続する。
現地滞在中はスタッフ全員が車中泊でしのぐ ハッシュタグ