ソマリア海賊に懲役10年。世界と比べると短いのか?
かねてから日刊SPA!の記者として、そしてソマリ語国際放送「ホーン・ケーブル・テレビジョン」(HCTV)の東京支局のボランティア・スタッフとして注目していた「なぜか日本で、そして裁判員裁判で裁かれるソマリアの海賊たち」。
彼ら4名のうち2名に、本日、海賊対処法違反(運航支配未遂)の罪で懲役10年の判決が東京地裁で下った。
足かけ3年に渡ってこの裁判を追ってきた私は、前回の記事(海賊はロケットランチャーをタンカーに向けた【ソマリア海賊裁判傍聴記】https://nikkan-spa.jp/369678)掲載後も、HCTV東京支局長の辺境作家・高野秀行氏と共に東京地裁に赴き、傍聴券の抽選にチャレンジ。だが、続報できなかったのは、私が抽選に外れたからだ(高野局長は抽選に当たり、被告への尋問を傍聴した)。
そして迎えた、本日の判決。
高野支局長から「2月1日からオレはタイに行ってしまうので、判決を見届けてくれ」と託され、「はい!」と一人東京地裁に向かったものの……。定員20名に対して、集まったのは71名。7番目に並んで、整理券番号も「107」だった私は、ラッキーセブンで今日はすっかり当たる気分でいたが、貼り出された紙に私の番号はなかった……。
ということで、報道を見ながらこの記事を書いているのだが、果たしてこの懲役10年という判決は、世界的に見てどうなのか? 実際の犯行状況や、各国の法習慣などもあるだろうから一概には比べられないが、ネットで調べる限り、アメリカでは禁固33年9か月、韓国では懲役13~15年、スペインでは禁固439年などの判決が下っているようで、バラつきがあるようだ。
しかし、こういった裁判が世界各国で行われたのは、そもそもソマリアが無政府状態だったから。日本で裁かれている海賊たちが犯行を行った2011年3月時点では、ソマリアは北部のソマリランドが独立を宣言(しかし、国際的には無視されている)、北東部もプントランドとして自治が行われており、南部は無政府状態、という国家三分状態だった。
だが、ソマリアでは昨年8月に選挙を経て新政府が樹立されている。これで、「海賊の裁判が世界各国で行われるという状況は変わるのでは?」と、高野支局長は予測する。ちなみに支局長は昨年11月にもソマリアを訪れている。
「新政府って言っても、ソマリランドは新政府を無視している状態。プントランドは従うみたいだけど、新政府にソマリア全土を統治する能力があるかというとかなり疑問。でも、一応、新政府ができたわけだからね。これまでは海賊を捕まえても裁く場所がないから、各国が引き取っていたわけだけど、新政府に押し付けられることになるんじゃないかな」
ということは、一連のソマリア海賊裁判が日本で行われるのは今回の事件が最後になるかもしれない。今回は4名のうち2名への判決だったが、残り2名の少年は家裁から逆送され、起訴されているので、また裁判が行われるはず。今後も、高野支局長と「日本に送られたソマリア海賊たち」に注目していきたい。
<取材・文/織田曜一郎(本誌兼「HCTV」東京支局ボランティアスタッフ)>
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