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壇蜜人気を検証する【医学博士・斎藤環】

◆斎藤環氏「“空虚”であるがゆえに“究極”なお姉さん」
斎藤 環

斎藤 環氏

「エロテロリスト」「和製モンロー」など、人気グラドルは誰もがキャッチコピー=キャラクターを持っている。壇蜜は「エッチなお姉さん」がこれに当たる。『キャラクター精神分析』の著者で精神科医の斎藤環氏はこう考察する。 「壇蜜さんは他のグラビアアイドルとは一線を画した存在です。彼女のキャラクターは、まさに“完成された女性”。というのも、精神分析学では、“究極の女性”は2つの要素を兼ね備えていると考えられているからです。ひとつは他人を惹きつける肉体的な魅力であり、もうひとつは“空虚な存在”であることです」  ここでいう「空虚」とは、欲という欲を放棄している状態を指す。 「例えば女性の、一歩引いて男性を立てるという行為。これは、優位でありたい、対等でありたいという欲求を、女性が放棄することで生じています。その空虚さは、男性からしたら奥ゆかしくて慎ましいイイ女と映るわけです」  壇蜜はその点において「空虚」であると。 「『ハアハアしてください』や、『オナペットになりたい』など、壇蜜さんの言動をつぶさに観察してみてください。我欲を徹底的に排除しています。逆説的になりますが、男性の征服欲を満たそうとすることでキャラクターを形成していることがわかる。つまり『エッチなお姉さん』は、他者の欲望が投影されて生まれるバーチャリティの強いキャラクターだということなんです」  従順な性奴隷、言い換えれば、ラブドール的な存在。それが壇蜜といえよう。 「壇蜜さんは、リアルとバーチャルの両方を内包しています。ですので、彼女の本質的な魅力に気づくには並外れた観察眼が求められる。男性の目利き力が試されているわけです。そういう意味では、『俺は壇蜜をわかっている』という男性の自尊心をくすぐってくれるグラビアアイドルと言えるのかもしれませんね」 【斎藤 環氏】 ’61生まれ。医学博士。爽風会佐々木病院・診療部長。漫画・映画等のサブカルチャーに精通し、幅広く執筆している。著書に『世界が土曜の夜の夢なら ヤンキーと精神分析』(角川書店)など ― 壇蜜がブレイクした本当の理由【6】 ―
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