R-30

サラリーマン漫画家から学ぶ「嫌われない下ネタ」

田中圭一

『イかれポンチ』(田中圭一)KKベストセラースより発売中

『イかれポンチ』という漫画を見つけた。作家の田中圭一氏は、僕とほぼ同世代で、じつは、現在もきちんとした企業に勤めるサラリーマンでもあるという。いわゆる“ながら漫画家”ってやつだ。

 テーマはデビュー以来、30年間ブレずに下ネタで終始一貫されているらしく、本作の構成は基本、2ページ完結の83連発ギャグである。面白い・つまらないの判断は、個人的に述べるなら「面白いのもあれば、つまらないのもある」といったところだろう。元も子もない感想であるのはわかっちゃいるが、“笑いのツボ”というのは十人十色なので「まあ、読んでみてください」としか言いようがない。ただ、この漫画から確実に学べることが、ひとつある。それは“女子にも嫌われない下ネタのさじ加減”なのである!

 この作家さん、手塚治虫タッチの下ネタギャグ漫画『田中圭一最低漫画全集~神罰~』で、すでに大ヒットを飛ばしているんだとか。本作も、カバーを外すとその裏面が全部下ネタ、カバー袖の裏も表もぎっしり下ネタ、さらに本体表紙の裏も表ももちろん下ネタ……。であるにもかかわらず、売れ行き好調なんだそうだ。

 あの西原理恵子氏も、帯で「わけ入ってもわけ入ってもドエロ」と、賞賛のコメントをイラスト付きで掲載している。

 女性の“隠れ読者”も案外多いようで、版元であるKKベストセラーズの担当編集氏は、「ぜひギャル誌とかに紹介してください!」と自信満々風に、僕にこの本を送りつけてきた。なぜ女子ウケ? 自分が女子の前で“Y談”を語っているシーンをダブらせながら考えてみたい。

 まず、ギャグとしてのオチがある。当たり前のことだが、ここはとても重要な点だ。

 Y談は“オチ”というウイットがなければ単なる“エロ”でしかない。

 “オチないY談”の語り手に対する評価は、「ただのスケベな人」止まりである。『みこすり半劇場』や、週刊SPA!本誌でも連載中の、峰なゆか氏の『アラサーちゃん』が、それなりのメジャー路線で認知されているのは、ひとえに“ウイットの効いた起承転結”の賜物なのだ。

 しかも、田中氏の画風は、読む側に“体液”を感じさせない。つまりウエットじゃないのである。これは本作でもまだ名残がある手塚治虫タッチによるものが大きいと思う。もっとも性的行為から遠くにあるスクエアなタッチであるからして、内容のエグさが“シュール”という形容によって巧妙に隠ぺいされているわけだ。作中に動植物の生態を多く引用するテクニックも見逃せない。

 女子とY談するときは、なるべく淡々と学術的に!ということだ。

 あと、うんざりするくらいの“下ネタの洪水”が、逆に功を奏していると言えなくもない。だって、普段は真面目で通っている人からたまに聞くY談って、3倍増にエロく感じるじゃないですか。逆に、寝ても覚めてもずーっとY談ばかり、みたいな人なら「ああ、このヒトはこういう人格なんだ……」という“呆れ”を通り越して、エロエロな一言一言も“普通”に聞こえてくるから不思議なものである。

 つまり、「量で周囲の人たちのエロ思考停止を促す作戦」である。現に、そーいう男が僕の友人にも約一人、実在する。

 いずれにせよ、大学を卒業以来ずっとサラリーマン生活をおくり続けている、という氏の経歴は無視できない。だからこそ、とかくエスカレートしがちな業界内での“下ネタの常識”に惑わされることなく、一般社会で受け入れられる“下ネタのバランス感覚”を培うことに性交、ではなく成功したのではなかろうか。 <取材・文/山田ゴメス>

【山田ゴメス】
1962年大阪府生まれ。マルチライター。エロからファッション、音楽&美術評論まで幅広く精通。西紋啓詞名義でイラストレーターとしても活躍。日刊SPA!ではブログ「50にして未だ不惑に到らず!」(http://nikkan-spa.jp/gomesu)も配信中。現在「解決!ナイナイアンサー」(日本テレビ系列)に“クセ者相談員”として出演。『クレヨンしんちゃん たのしいお仕事図鑑』(双葉社)も好評発売中!

1962年大阪府生まれ。マルチライター。エロからファッション、音楽&美術評論まで幅広く精通。西紋啓詞名義でイラストレーターとしても活躍。著書『クレヨンしんちゃん たのしいお仕事図鑑』(双葉社)、ツイッターアカウント@gomes12081
イかれポンチ

下ネタも使いよう




おすすめ記事