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第2回将棋電王戦は第4局でコンピュータ側が勝ち越すのか!?

 4月6日、将棋のプロ棋士5人と5つのコンピュータ将棋ソフトが対決する『第2回 将棋電王戦』の第3局「船江恒平五段 vs ツツカナ」が、東京・千駄ヶ谷の将棋会館で行われ、二転三転する大激戦の末に「ツツカナ」が勝利をおさめた。これで団体戦の対戦成績はプロ棋士側から見て1-2となり、コンピュータ側が勝ち越しに王手をかけたことになる。

⇒ 電王戦第3局観戦記へ(http://nikkan-spa.jp/420273)

 本観戦記をご覧いただければわかる通り、第3局は二転三転する大激戦であった。意外な一手を次々にくり出してくる「ツツカナ」に対し、船江恒平五段が冷静に対処して土俵際まで追い込んだものの、あと一歩のところでミスが出て逆転を許した、というのが大筋の流れだ。

 振り返ってみれば、第2局と第3局は、ともに「迷わない」「怖がらない」「諦めない」そして「疲れない」というコンピュータの特徴がいかんなく発揮された内容であった。たとえ劣勢になっても平常時と同様に最善手と思われる手を指し続けるコンピュータに対し、体力的にも精神的にも人間が根負けしてしまったという感がある。

「結果的には勝ちましたが、あまり勝ったという気はしていません。秒読みになったことも大きいと思います。終盤で船江五段が優勢になり、時間がなくなって秒読みになったところで一瞬の内に逆転して、何が起きたのかわからないような感じです」(「ツツカナ」開発者・一丸貴則氏)

船江恒平五段

対局終了直後の船江恒平五段

「『ツツカナ』は強かったです。事前の練習からわかっていたことですが、特に終盤が粘り強い。最後は自分の精神的な弱さが出てしまったと思います。自分は終盤では手を狭くして読むタイプなんですが、『ツツカナ』と将棋を指していて、将棋の終盤にはこんなにいろんな手があるのかと考えることも多かったです」(船江恒平五段)

 記者会見での一丸氏は、まるで『ドラゴンボール』の孫悟空のように、勝敗云々より、残り時間が少なかったために、相手が全力を出し切れなかったのではないかと残念がっているようにも見えた(※)。また、終局直後にもかかわらず、決して言い訳めいたことを言わない船江五段も、プロ棋士としての矜持を見せていた。

※『第2回 将棋電王戦』では1分未満の考慮時間は切り捨てのルールだが、この切り捨て処理を行うと残り時間の処理に誤差が発生するおそれがあるので、「ツツカナ」は使った考慮時間をそのまま計測していた。このため、第3局で「ツツカナ」は時間を30分弱残していたが、残り時間はなくなっていると考え、最終盤では1分未満の指し手を続けた。結果的に、船江五段は相手の考慮時間を使って考えるという手段もなくなっていたことになる。

船江恒平五段,「ツツカナ」開発者・一丸貴則氏

船江恒平五段と「ツツカナ」開発者・一丸貴則氏

 ところで、次の第4局に登場する塚田泰明九段は、記者会見でこのようなコメントを出していた。

「必勝という局面もあったと思いましたが、本当に残念です。持ち時間は長いほうがいいとは言っていたんですが。人間が優勢になった局面で残り時間がどのくらいあるかは重要だと思います」(塚田泰明九段)

 塚田九段は、この『第2回 将棋電王戦』のルールが策定される際に、持ち時間は現行の4時間ではなく、できれば6時間(※)あったほうがよいと主張していたという。これまでの対局を見る限り、その危惧は当たっていたことになる。

※プロ棋士にとって最も重要な棋戦の1つとされる『順位戦』の持ち時間が6時間である。ただし『順位戦』は終局が頻繁に0時を回るため、6時間という持ち時間には興行的な難しさもあることが予想される。

 この3戦の中で「もう自分なら投了するかも」とプロ棋士が語るような、コンピュータ劣勢の局面は何度か見られた。しかし、コンピュータは諦めないため、長期戦になりやすい。しかも、将棋はいくら優勢でも1つミスをすると即負けになる。現在のコンピュータ相手の1分将棋では、いかにプロ棋士といえども、かなり条件は厳しいと言わざるをえない。

ここまでの3戦で棋士側が2敗したこと、若手の中でも上位に位置する船江五段にも勝ったことから現役棋士約160人の半分(80)、いや3分の1以上(50)に相当する力がある、という見方をせざるを得ないと思います」(渡辺明竜王@渡辺明ブログ)
http://blog.goo.ne.jp/kishi-akira/e/2a6e3e0ff4f6405b16f7d29d5f882cba

 もちろん、そうしたもろもろの要素を含めての「将棋」であり、第4局の塚田泰明九段や、第5局の三浦弘行九段には、そうした厳しい条件を乗り越えるプロ棋士の凄味を見せてもらいたい、という筆者個人の将棋ファンとしての希望もある。

 しかし電王戦は、いわば異種格闘技戦のような側面もある(※)。人間側にのみ大きな負荷がかかる肉体的・精神的なプレッシャーの部分をどう考えるのか。それ以外にも細かいことを言えば、事前にソフトを貸し出すかどうか、開発者が序盤の指し手を入力するのは何手目までが適切か、などなど、にわかには答えを出せないような問題は多々ある。

※総合格闘技イベント『PRIDE』の選手紹介映像を手がけた佐藤大輔氏が電王戦の公式PVを監修しているというのも、非常に示唆的だ。

 これは、コンピュータが明らかにプロ棋士と肩を並べるところまで来たからこそ出てきた、歴史的な問題だ。これだけ大きな話題になり、将棋としても非常に面白い内容が続いているだけに、第4局と第5局の展開を占う上でも、今後の電王戦そのものを考える上でも、ひとつの問題として提起しておきたい。

「技術的には、たぶんもうコンピュータが名人を超えているので」(「puella α」開発者・伊藤英紀氏@公式PV)

「名人は超えてないと思いますけどね。あの序盤でよくそういうことが言えるなと思いますけれども」(塚田泰明九段@公式PV)

 第4局に登場する「Puella α」は、『第1回 将棋電王戦』で米長邦雄永世棋聖を破った、あの「ボンクラーズ」を改名したもの。「王座」のタイトル獲得経験もあり、かつて必殺戦法「塚田スペシャル」で将棋界を席巻したベテラン・塚田九段を前にしても、開発者の伊藤英紀氏は自信たっぷりに不敵な笑みを浮かべる。『第2回 将棋電王戦』第4局「塚田泰明九段 vs Puella α」は、いよいよ明日4月13日だ。 <取材・文/坂本寛 撮影/林健太>

第2回将棋電王戦

「第2回将棋電王戦」これまでの結果

●『第2回 将棋電王戦』第4局「塚田泰明九段 vs Puella α」- ニコニコ生放送
http://live.nicovideo.jp/watch/lv118757229

●第4局「塚田泰明九段 vs puella α」PV – ニコニコ動画:Q
http://www.nicovideo.jp/watch/1364394037

●第2回将棋電王戦 特設ページ
http://ex.nicovideo.jp/denousen2013/

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