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アメリカの対北朝鮮政策 実は「専門家不在」だった

アメリカ ミサイル発射は「延期」になったのか? それとも、まだ発射の可能性は残っているのか……?

 日に日にエスカレートしていた北朝鮮による挑発行為が、ここにきて「撃ち止め」の様相を呈してきた。もちろん、米韓による対話呼び掛けに応じず、開城工業団地でも韓国側企業の“締め出し”を続けているため、あくまで現状は「小康状態」。連日多くのメディアでかまびすしく論じられていたミサイル発射の「Xデー」についても、とんと聞かなくなった印象だ。安全保障問題専門のシンクタンク研究員が話す。

「『今後も撃たないのではないか』という説も出てきていますが、中距離弾道ミサイル・ムスダンは新型ミサイル。どんな武器でも実験なしには使用できないわけですから、当然一度は発射されることになるはず……。それより一番の問題は、現在のアメリカ政府のなかに北朝鮮のことを真に理解している専門家が1人もいないという点ですよ……」

 一連の北朝鮮による挑発行為を受け、2004年に鳴り物入りでできた国家情報長官のポストに就いているジェームズ・クラッパー氏は、「我々はすでに制裁措置を使い果たし、有効な手段を持っているのは中国だけ」などと米下院の公聴会で発言。中央情報局(CIA)長官のジョン・ブレナン氏に至っては「金正恩は権力を持って日が短く、父の金正日や祖父の金日成のような詳しい情報が少ない」と開き直っているほどだ。

「現在、アメリカのなかで朝鮮半島情勢に詳しい専門家は、ビクター・チャ氏(ブッシュ政権のNSCアジア担当補佐官)を筆頭に、ブルース・クリングナー氏(CIA、米ヘリテージ財団)、それからマイケル・オースリン氏(米エンタープライズ政策研究所日本部長)くらい。にもかかわらず、今彼らはみな蚊帳の外。重要な情報を吸い上げる体制が整っていない状況が続いていたんです。ただ、彼らもっとも詳しい専門家についても、論文を見ると『○○かもしれない』『××の可能性もある』といった曖昧模糊な表現でしか分析できていない。イラクのときと違い、長年、朝鮮半島情勢を軽視してきたツケが回ってきたという見方もできます」(シンクタンク研究員)

 まさに、遅きに失した状況と言ってもいいだろう。「大量破壊兵器もない」「核査察も受け入れていた」イラクに対しては終始強硬姿勢を貫いたアメリカが、なぜ、「すでに核保有国」で、「査察を追い返した」過去があり、「原子炉施設の再稼働」を宣言した北朝鮮を前に為すすべがないのか。外務省関係者が話す。

「米国務省の中に北東アジアの情勢に詳しいスタッフもいるのですが、北朝鮮と直接交渉に携わっていたという人間が実はもうそれほどいないのも事実。思い返せば、ブッシュ政権の一期目から二期目に移行する際に、対北朝鮮外交を軟化させる方向に舵を切ったところからおかしくなった……。2008年に北朝鮮から言われるがままに、テロ支援国家の指定解除をおこなったが、これで拉致問題解決にも急ブレーキがかかったのは周知のとおりです」

 アメリカ国内では、北朝鮮主導のチキンレースに付き合わされている政府の対応に業を煮やして批判の声も挙がっているという。

「長年にわたる対北朝鮮政策は完全に失敗だったのではないかという見方はすでに出ているが、現在目の前にある危機をどのように回避するかが今の課題。過去に国家安全保障会議(NSC)日本・朝鮮担当部長も経験し、東アジア担当大統領特別補佐官を務めていたマイケル・グリーン現戦略国際問題研究所(CSIS)上級顧問・日本部長の再起用といった話も出始めていますが、いずれにせよ、現在北東アジアを巡る安全保障政策の大幅な見直しを進めているところです」

 我が日本の命運はよかれ悪かれ日米安保にかかっている。アメリカの底力発揮で、北朝鮮の暴走を食い止めてもらいたいところだが……。 <取材・文/日刊SPA!取材班>




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