【将棋電王戦第5局観戦記3】電王戦に見る勝負を超えた意義

「『GPS将棋』は『入玉』も得意なことはわかっていましたし、バグを起こすような将棋にはならないと思っていましたので、普通に指したつもりです。相手が強かったので仕方ないんですが、今後も電王戦を何年も続けてほしいという思いがありましたので、責任を果たせなくて申しわけない気持ちです」(三浦八段)

「このような貴重な機会をいただき、われわれの持てる最高のコンピュータ将棋プログラムを用意しようと準備をして参りました。とりあえず、最後までトラブルなく終わることができたことをうれしく思います」(「GPS将棋」開発者・金子知適氏)

 本局が完勝か完敗かのどちらかになりやすい将棋の作りだったとはいえ、「GPS将棋」は圧倒的なまでの強さを見せた。今後のプロ棋士たちの研究による結論が待たれるとはいえ、三浦八段をして「わからない」と言わせるような「新手(※)」をくり出しての勝利だったことも、コンピュータ側が団体戦を勝ち越したこと以上に、非常に意義深いことだろう。

※正確には、たんに前例のない手を「新手(しんて)」とは呼ばない。その手を指したことによって対局に勝ち、プロ棋士間で検証された上ではじめて「新手」と認められる。

 終局後には、本局の記者会見とともに『第2回 将棋電王戦』の対局者・開発者全員が参加する記者会見も行われた。

「『GPS将棋』は1台でも十分強いので、今回がどのくらい強くなっているのかはわかりません。まだまだ自分より強い棋士もいますので(トッププロでも勝てないと言えるかどうかも)わかりません」(三浦八段)

「私個人としては、コンピュータは対局によって出来・不出来が激しいと思ってます。開発者はコンピュータ同士で何十局も何百局も指して強さを計るもので、1局で知見を申し上げる文化ではございません」(「GPS将棋」開発者・金子知適氏)

 一将棋ファンとして、この『第2回 将棋電王戦』では、これまでに感じたことがないような種類の緊迫感、そして驚きや感動をたっぷりと味わうことができた。毎局毎局あまりに情報量が多く、観戦記の執筆もままならないまま丸2日寝込んでしまうようなこともあったが、かかわったプロ棋士たちや開発者たちの熱気と、将棋の面白さのほんの一部でも伝えられたとしたら幸いだ。

 『第3回 将棋電王戦』の開催については現在協議中とのことだが、これはぜひとも開催するべきであるし、開催しないという選択肢はないように思われる。ニコニコ生放送でのべ200万人の視聴者を集め、将棋ファン以外にもアピールしたというだけでなく、プロ棋士同士のタイトル戦とは一味違った面白い将棋を見ることができる棋戦として、これからも続くことを切に願っている。そもそも当の対局者が発言している通り、プロ棋士とコンピュータの勝負は、まだ終わっていないのだから。

 本局で敗れた三浦八段も、日本将棋連盟会長・谷川浩司九段が述べたとおり「責任を感じることなく胸をはってほしい」。電王戦に登場したプロ棋士たちはみな、勝敗にかかわらず、将棋指しとしてのプライドと勇気を持って戦う勝負師の姿を見せてくれた。もちろん、第3回の開催にあたっては、新しいルール作りが不可欠であろう。また筆者個人としてはまったく逆の意見だが、電王戦によってプロ棋士の権威が損なわれると危ぶむ向きもあるだろう。しかし、そうした障壁を乗り越えてでも開催すべき価値があると確信しているのは、筆者だけではないはずだ。
 
「お互いに仲良くやっていきましょうねって、こういうことですね。まあ、みなさんよろしく」(米長邦雄永世棋聖)

<取材・文/坂本寛 撮影/林健太>

⇒【付記】「わからない」は何だったのか? プロ棋士・将棋ファンたちの検討
http://nikkan-spa.jp/429668

●第2回将棋電王戦 エンディング PV – ニコニコ動画:Q
http://www.nicovideo.jp/watch/1366458244

※『週刊SPA!』5/14発売号「エッジな人々」では、渡辺明竜王のインタビューを掲載予定です。

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