ニュース

「アベノミクス」で加速する東九州自動車道のムダ

安倍政権になって、工事が急速に進む東九州自動車道。そのルートは盛り土や橋梁が多い

 安倍政権が「国土強靭化」(防災目的の公共事業推進)を旗印に実現を目指しているのが、人口増加時代に作成された「高速道路(高規格道路)1万4000km整備計画」だ。「無駄な高速道路は造らない」と啖呵を切った小泉政権時代には、適正な高速道路総延長の上限は「整備区間9342km」とされていた。ところがアベノミクス称賛報道の追い風に乗って、当時を大幅に上回る巨大道路網が造られようとしているのだ。

 これで一気に活気づいたのは国交省道路局。これまでは検討対象外だった不採算(赤字)路線までを含めた「全国ミッシングリンク(未開通)路線」をまとめてWebで公表。これに呼応するようにして、安倍政権は2012年度の補正予算で「ミッシングリンク路線の整備」に623億円を盛り込んだ。こうして南海トラフ地震の発生予測地域(紀伊半島や四国、東九州など)をはじめ、全国各地の巨大道路計画が加速し始めた。

 その一つが、北九州市から大分方面に延びる「東九州自動車道」。安倍政権初の補正予算では同路線の「佐伯~蒲江」間の本年度当初予算は105億円だったが、安倍政権初の補正予算では約93億円が加えられた。つまり、予算が倍近く増えたため、急スピードで建設が進むことになったのだ。

 しかし東九州自動車道のルートには、一部4車線化した国道10号線が並行しており、交通量の少ない山間部も多い。福岡県豊前市のミカン農家、岡本栄一氏はこう話す。

「事業者は『費用便益比は1.4』(費用1に対して利益が1.4)と言っていますが、将来の人口減を考慮しておらず、効果を水増しした数値になっています。私たちが試算したところ、費用便益比は0.7しかありませんでした。しかも、わざわざ建設費用が高くなるルートをとっている。『東九州自動車・椎田南(福岡県築上町)~宇佐(大分県宇佐市)』の予定ルートの建設費は958億円ですが、畑や民家の少ない山裾側を通るルートにすれば、橋梁や盛土量などが減って480億円で済むのです」

 岡本氏らは専門家の協力を受けて予定地周辺を調査し、各工事費用を積算した結果、山裾ルートで建設費が半減するとの結論を得たのだ。今年4月2日、その資料をもとに同区間の事業認定取り消しを求める行政訴訟を福岡地裁に起こした。

代替案のルートを説明する岡本栄一氏

「費用も住民の負担も大きいルートになぜ固執するのでしょうか。代替案を検討もせず、一度決まった建設費を減らせないのは、建設業者のためとしか思えません。安倍政権は『費用対効果を考慮する』と国会で答弁しているというのに、経済成長を前提とした一昔前の計画を見直そうとせず、割高の道路建設に突き進んでいます。これから先、人口減・高齢者増社会では交通量も納税者も少なくなるため、さらに『効果』の部分も減少する。それに見合った道路整備計画にスペックダウンする必要があると思います。現在の安倍政権は、目先の経済効果ほしさから負債を未来に先送りしているだけ。この莫大なツケを払わされるのは今の若者たちです。それぞれの巨大道路計画は、将来にわたって借金を返し続けるに値する事業なのかどうか。もっと若い世代に関心を持ってほしいと思います」(岡本氏)

<取材・文・撮影/横田 一>




おすすめ記事