「新日本プロレスはこの2年が勝負」会長・木谷高明氏インタビュー
今年1月に東京ドームで行われた新日本プロレスの「WRESTLE KINGDOM7」は、観客数2万9000人を動員し、会場には子供から女性ファンの姿も増えているという。プロレス界の現況と再ブレイクの可能性を探る!
◆カードゲームの異端児がマット界に殴り込み!「キャラクタービジネスとしてプロレスの魅力は絶大です!」
新日本プロレスのV字回復を語るときに外せないのが、昨年、新オーナーとなった木谷高明会長の存在。もともとプロレスが好きな木谷氏だが、当然、趣味や道楽で新日本を子会社化したわけではない。
「一番魅力的だったのは、キャラクターコンテンツとしての可能性。この点で、プロレスは格闘技より圧倒的にビジネス向きだといえます。そして、過去40年分の映像資産。時間にして5000時間以上はあるんじゃないでしょうか。あとは35歳以上の世代ではプロレスの知名度も高くなじみも深い」
力道山の時代から、プロレス団体の経営はエース選手兼社長によるワンマンが基本だった。メガネスーパーのSWSなど、業界外から新規参入したケースもあったが、いずれも短期間で崩壊の憂き目に遭っているが、「僕はエンタメ業界から来た人間。プロレスのカルチャーに理解があるんです。カードゲームや声優事業など、資産を共有できる部分も多いですし、15年間低迷を続け、底を打った後の跳ね上がる力は相当です」。
新日本プロレスは、ブシロード傘下になる直前の売り上げ決算が11億4000万円、今期の7月末決算は16億円程度になると予想される。だが、木谷氏はまったくこれに満足していない。
「この業界で年間売り上げ1位はアメリカのWWE。640億円程度です。2位は格闘技のUFCですが、3位はグッと規模が下がって新日本になる。当然、僕らとしてはWWEを目指さなくてはいけない」
現体制になってから大量の広告出稿も話題を呼んだが、それも来年くらいから本格的に回収モードに入る。カードゲーム「キング オブ プロレスリング」とのシナジー効果も効果を上げ始めており、会場でのグッズ販売以外でのマーチャンダイズを本格化。さらにファミリー層の支持拡大も順調だ。
「この2年が勝負。力道山や猪木さんの時代からマット界は一部のカリスマによって成り立ってきた。誰でも知っているカリスマはK‐1の魔裟斗選手が最後。だから僕は、東京ドーム大会でも一般知名度の高い桜庭選手らの出場を強行しました。早くオカダ選手にはカリスマになってもらいたいです」
【木谷高明氏】
’60年、石川県生まれ。山一證券勤務を経て、’07年にブシロードを設立。カードゲームを中心に幅広く事業展開を進める。’12年に新日本プロレスを子会社化、取締役会長に就任した
取材・文/小野田 衛 取材/安田はつね(本誌) 撮影/増田岳二 菊竹 規
写真協力/プロレスリング・ノア DDT みちのくプロレス
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