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くすぶる者たちが輝ける場「ガンバレ☆プロレス」とは何か【鈴木健.txt氏特別寄稿】

今年1月に東京ドームで行われた新日本プロレスの「WRESTLE KINGDOM7」は、観客数2万9000人を動員し、会場には子供から女性ファンの姿も増えているという。プロレスの魅力といえばやはり試合。そこで、’13年上半期、メジャーとインディーで最も熱かった試合を“活字プロレス”の名手が紹介! <2013年上半期を象徴する試合はコレ!~インディー団体~> ◆くすぶる者たちが輝ける場ガンバレ☆プロレスとは何か(文・鈴木 健.txt)
大家健

暑苦しくも心地よい空間で絶叫する大家健(写真右)

 今、プロレス界で密かにタダごとではなくなっているのが「ガンバレ☆プロレス」である。その直球すぎる団体名だけでもアレなのだが、ミニマムな空間においてインディー特有な得体の知れぬ熱気が充満し、日本一暑苦しい磁場を発生させているのだから注目せざるを得ない。  DDTの別ブランド、ユニオンプロレスで“カリスマ号泣師”の異名をほしいままにしていた大家健。失踪歴も誇る彼は、自分の試合へ勝手に退団を懸けて闘ったところ、あっさり負けてしまい行き場を失ってしまう。  そこでDDTの大社長・高木三四郎から「上がるリングがないなら自分で旗揚げしてみろ!」と言われその気になり、勢いで団体を設立。自身の決めゼリフである「ガンバレ、俺☆!」にちなみ、必要以上に筆力の強そうなフォントでガンバレ☆プロレスと命名した。  3月6日、団体の是非を観客に仰ぐプレ旗揚げ戦を敢行。「逆境ナイン」ばりの諦めない姿勢と“!”がデフォルトな言葉の洪水、100%でなければ死んでしまうと言わんばかりの姿勢が共感を呼び、73人中69人の支持を得た。  大家以外のメンバーも、学プロ出身でDDT映像班となりながら自己確立に悩む今成夢人、芸人としては面白くなさすぎる、ばってん多摩川改めガンバレ玉川と、くすぶらせたら右に出る者はいない人たちが集結。その他の参戦選手もスタープレーヤーは皆無にもかかわらず、いちいち微妙な登場人物がまた琴線を刺激する。  こうしたテンションがまったく落ちることなく、去る6月2日には旗揚げ第2戦を開催。メイン後には、大仁田厚全盛期のFMWのごとく、ガンプロ信者と化したオーディエンスがリングサイドへ押し寄せてキャンバスをバンバンと叩く一体感が現出するにいたった。  もはや整合性という価値観など跡形もなく吹っ飛び、直球すぎる人間力によってガンプロはマニアのハートをワシ掴みにした。それは、マッスル坂井による「マッススル」がサブカルの世界に届いていなかった初期の情景と重なる。  やることなすことがいかがわしく、ニヤニヤしていた観客がついうっかり感動してしまうソウルフルな世界観……ちなみに、ガンプロのスローガンは「プロレスを! メジャースポーツに! するからな!!」(3回言う)である。 【鈴木 健.txt氏】 ’66年、東京都生まれ。『週刊プロレス』黄金時代を支えた記者の一人。’09年よりフリーの編集ライターとして音楽、演劇でも執筆。ツイッターのアカウントは@yaroutxt ― 激論 プロレス人気は再燃するのか?【4】 ―
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