2016年までの為替・金利・株「メーク・ドラマ」【前編】
「来年以降の日本と世界はもっとドラマティックになる」というタイトルで過去2回書いてきましたが、今度はその「マーケット編」です。まずは、2014年に入り、米株の「イェレン暴落」、そして90円割れへ向かう「最後のドル安」、さらに米インフレ懸念「サプライズ」を経て、ドル高へ大逆転が起こるといったシナリオです。
◆米株のイェレン暴落
まず手掛かりになるのは、やはり米超金融緩和見直しでしょうか。FRBが「債券市場の最大の買い手」という立場をやめていく中で、米債券利回りは、「教科書」通りに米景気で正当化される水準、たとえば米10年債利回りは3.5-4%へ急騰が続きそうです。
2014年になり、バーナンキからFRB議長が新しい人物に代わるあたりから、マーケットでもそんな米金利急上昇が、FRBの政策に反応したものではなく、むしろ長期金利はコントロールできないといった「教科書」通り、まさに制御不能の動きになっているとの見方が一般化し始めるかもしれません。
「ノー・コントロールの金利上昇」という恐怖は、バーナンキから交代した新米「ドルの番人」の手腕への不安とあいまってリスク回避、株暴落をもたらす可能性も気になります。
実は、NYダウは米景気で正当化できる水準としては1万2000ドルを割れてもおかしくなさそうです。そんなNYダウ1万2000ドル割れといった暴落が起こったら、例えばポスト・バーナンキがイェレン現FRB副議長だったとして、マーケットはそれを「イェレン暴落」と呼ぶことになるのでしょう。
新米の「ドルの番人」を急襲した金融市場の大混乱としては、1987年10月、ブラックマンデー、NY発世界同時株暴落がありました。「最強のインフレファイター」とされた前任者、P.ボルカーから交代したばかりの新米FRB議長、A.グリーンスパンは、緊急避難的な流動性大量供給でとりあえず沈静化しました。
これにならったように、バーナンキの後任議長も緊急避難の流動性大量供給に動くと何とか金融市場は落ち着きを取り戻すことができるかもしれません。米長期金利は、6月前後に年間の天底をつけやすいといったアノマリー通りに、2014年も6月前後にピークアウト、一転して急低下に向かう可能性は注目されます。
◆最後のドル安
そういった中で注目されるのは為替ドル相場ではないでしょうか。「イェレン・ショック」のリスク回避で上げ渋っていたドルは、米金利が急低下に向かう中で意を決したように下落へ向かう可能性はないでしょうか。
米国は金融緩和見直し、そして日本や欧州は金融緩和維持といった具合に金融政策の方向性が逆向きの中で常識的には考えにくい90円を大きく割れるようなドル急落が起こるとすれば、そういったシチュエーションになるのではないでしょうか。
意外な、意外なドル安、しかしそれでもやはりそれは、後から振り返ったら、あくまで「最後のドル安」に過ぎなくなるのではないでしょうか。カギになるのは、米国内でのインフレ懸念の拡大かもしれません。
◆米インフレ懸念サプライズ
FRBがインフレ率の指標として注目しているPCEコアデフレーターは2013年には一時前年比上昇率が1%割れ含みとなり、本来ならデフレへの転落が警戒される動きとなりました。ところが、2014年夏にかけて発表されたこの指標は、「サプライズ」といえるインフレ急上昇になる可能性があるかもしれません。
PCEコアデフレーターは、「財政の崖」騒動で注目された米政府予算の歳出強制カットの影響といった特殊な要因で、実態以上に下押し圧力がかかっていた可能性があったのです。この特殊要因は、歳出カットから一年後の2014年春の統計から剥落します。
特殊要因の影響で実態以上に下ぶれしていた1年前に比べて、2014年春以降のインフレ率は前年比で急騰する可能性があるでしょう。さらに、米政府と議会が財政赤字削減で合意に達し、歳出強制カットが終了となると――。
2014年夏にかけて発表されたPCEコアデフレーターで示されるインフレ率はまさに「サプライズ」といえる急上昇となり、とたんに米国ではインフレ懸念もある中で緊急緩和を長引かせすぎたのではないかとの不安が台頭、早期のゼロ金利解除、利上げが注目されるようになる可能性はあるでしょう。
そうなると、米国では短中期金利も急騰に向かい、ドル安からドル高へ再び大きく転換する可能性があるのではないでしょうか。(続く)
【吉田 恒氏】
1985年、立教大学文学部卒業。大手投資情報会社で編集長、代表取締役社長などを経て、2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。
2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。
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