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「コスト優先」の事故収束作業が汚染水対策を遅らせる

福島第一原発

汚染水タンクの前でホースの取り付け作業を行う作業員たち

「汚染水は完全にブロックされている」というオリンピック招致での安倍首相の発言とは裏腹に、福島第一原発の汚染水対策は迷走するばかり。この秋、日本各地を台風が襲った際も、汚染水タンク周囲の堰が大雨で溢れて、汚染水を海へと緊急放出した。

 事故収束作業の現場は今どうなっているのだろうか? 多くの作業員や専門家への取材を続けている、ジャーナリストの志葉玲氏に話を聞いた。

「事故収束の現場の人々にとって、汚染水問題は『何をいまさら』という感じです。2011年6月の時点ですでに、作業員の多くが『“原発建屋内に地下水が流入しているのでは?”との疑いを持っていた』と言っています」(志葉氏)

 対応が遅れただけでなく、ようやく始まった汚染水処理の方法にも問題があるという。

「汚染水を汲み出す配管に、放射線に耐える素材を使っていなかったり、人員をケチって汚染水漏れのチェックを少数の東電社員だけでやっていたり。汚染水タンクからだけでなく、配管や配線ケーブル等を通す穴からも汚染水が漏れている可能性が高いのですが、確認のための人員は全く足りていないようです。なかでも深刻なのは、高い技術を持った原発作業員が福島第一に集まらなくなってきたということ。

 原発での作業経験に乏しい労働者の割合が高くなっていることが、相次ぐトラブルの大きな原因になっている。なぜかというと、労働者の待遇がひどいからです。東電による競争入札で、労働単価が下落しました。末端の下請け業者では、移動や待機など実質の拘束時間を含めると、時給800円以下の金額で働かされている人もいます。

 しかも、強力な放射線の中での作業で被曝限度量を越えても、その間やその後の保障は皆無。これで安心して働けというほうが無理というものです。原発を再稼働すれば他の原発に熟練作業員が流出し、ますます福島第一の人的空洞化は深刻になることが懸念されます」(同)

⇒【写真】「原発内部の休憩所」はコチラ
http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=530611


福島第一原発

原発内部の休憩所。支給される下着も以前は使い捨てだったが、コストカットのため使い回しに。黄ばみなどの汚れが残っていて作業員たちには不評だ

 経産省によれば、福島第一原発の地下を毎日1000トンもの水が流れている。600トンは海に流れ、そのうち300トンは汚染水や土壌と混じりながら海に流出。残りの400トンは原子炉建屋の汚染水と混ざって滞留しているのだという。

「原発にたまった水をポンプで汲み出してフランジタンクに貯めているそうなのですが、これを浄化するための多核種除去装置 『ALPS』も本格稼働しないまま。さらにこのタンク自体から汚染水が漏れているうえ、タンクの置き場所もなくなってきています。

 京大原子炉実験所の小出裕章助教が当初から訴えていたように、大型タンカーを汚染水タンク代わりに使い、処理施設のある柏崎刈羽原発まで運ぶことも必要かと思います。ただこれらはあくまで対処療法で、一刻も早く地下水の流入を防ぐことが重要。政府は『冷却パイプを使って地中の土を凍らせる』という『凍土遮水壁』の建設を計画していますが、これは技術的に未確立だとの指摘もあります。すでに数十年の蓄積がある『連続地中壁』など、より確かな工法を使うべきではないでしょうか。

 立命館大学の山本廣成特任教授は『鉛やスズなど融点の低い金属を投入して、原子炉内の核燃料を包んで封じ込められたら、汚染拡大を止められるかもしれない』と主張しています。これも地中壁と平行して検討すべき方法だと思います」(同)

 事故収束現場でトラブルが頻発する理由はどこにあるのだろうか。

「営利企業である東電に事故収束を任せていることがいちばんの原因です。安全性よりもコストを優先していることがすべての問題に絡んでいる。しかし、東電は地下遮水壁の建設コストが株主総会で指摘されるのを嫌い、工事を先送りしました。その結果が現在の状況です。こうした諸問題を解決するためには、東電の原子力部門を破綻処理させて、新たに『廃炉公社』をつくるべきでしょう。充分な資金と計画性をもって事故処理に望むほうが、結果的に安上がりで効果的だと思います」(同)

※志葉玲氏は『原発依存国家』『母親たちの脱被曝革命 ~家族を守る22の方法~』(ともに扶桑社新書)に執筆陣として参加。これらの出版記念イベントとして、11月3日(日)まで東京都世田谷区の「キッドアイラックアートホール」ギャラリーで、画家/ジャーナリストの増山麗奈氏と共同展覧会『原発と戦争展』を行う。詳細は http://reishiva.exblog.jp/21317404/

<取材・文/日刊SPA!取材班 写真/桐島瞬>

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