中国でも悪質ベビーシッターが社会問題化
ベビーシッターに預けた2歳児が死亡した埼玉県での事件で、日本ではベビーシッター利用の危険性が話題となっている。しかし、お隣の中国でも深刻な問題が巻き起こっている。
中国では「単独二孩」と呼ばれる、一人っ子政策の緩和によるベビーブームを背景に、ベビーシッター需要が高まっている。『中国新聞網』(3月18日付)によると、杭州市では都市部の平均所得の2.5倍以上にあたる、月収17万円を超えるベビーシッターも珍しくなくなってきているという。
仏山市で貿易業を営む林田岳男さん(仮名・49歳)も熾烈なベビーシッター争奪戦について話す。
「仲介業者や子供の親による引き抜きが横行していて、すでにシッターと契約していても安心できない。基本給以外に旧正月やクリスマスの心付けも必須で、これを怠った知人は、ベビーシッターが子守の途中で姿を消し、家に帰ると3歳の息子が置き去りにされていたそうです」
絶対的な売り手市場のなか、問題となっているのが粗悪なベビーシッターの増加だ。『東方網』(3月14日付)によると、ベビーシッターの過失による乳幼児の死亡事故や、関連訴訟が増えているという。4歳になる娘を持つ武漢市の運送業・武智義文さん(仮名・36歳)は、妻の復職に伴い、紹介サイトでベビーシッターを見つけたが、安心して子供を預けられるレベルではないという。
「農村出身のうちのシッターは、いかがわしい民間療法を勝手に子供に施そうとする。子供の足に魚の目のようなデキものができたことがあったんですが、そのときは乾電池を分解して中身の物質をおもむろに塗ろうとしていた(笑)。彼女が育った村では当たり前の処置だったんだそうです。また、『嘘も方便』とか『お金がすべて』などという教育上よくない言葉を勝手に教えている。それでもほかに当てがないので、彼女をクビにするわけにいきません……」
さらに悪質なケースも起きている。昨年10月、北京市内でベビーシッターの女が子守を任されていた4歳男児を連れ去り、身代金を要求するという誘拐事件も起きているのだ(『北京晩報』)。
深セン市在住の主婦・山内京子さん(仮名・36歳)も、2歳の娘をベビーシッターに連れ去られた経験があるという。
「昼休みに忘れ物を取りに自宅に帰ったら、いるはずのシッターと娘がいなかった。最悪の事態も頭をよぎったのですが、うちのシッターはうちの子以外にも複数の子供を引き受けており、別の場所でまとめて子守をしていた。うちはすぐにクビにしましたが、一人保育園状態だった彼女はいまでもかなり儲けているに違いない」
一方、別の観点から問題を指摘するのは、トラブル孫悟空こと、ジャーナリストの周来友氏だ。
「富裕層のなかには、お金にものをいわせ、シッターに子守だけではなく子供の“召使い”のような役をやらせる親もいる。4歳くらいの子供が親より年上のシッターを罵ったり、命令口調で話していたりするのもよく見る光景ですが、彼らの将来が心配になる」
当局の試算では、中国は今後10年間で1億9000万人の新生児が誕生するという。ベビーシッターの環境整備も大きな課題なのだ。 <取材・文/奥窪優木>
週刊SPA!連載 【中華人民毒報】
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1980年、愛媛県生まれ。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国に渡り、医療や知的財産権関連の社会問題を中心に現地取材を行う。2008年に帰国後は、週刊誌や月刊誌などに寄稿しながら、「国家の政策や国際的事象が末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに地道な取材活動を行っている。2016年に他に先駆けて『週刊SPA!』誌上で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論の対象となり、健康保険法等の改正につながった。著書に『中国「猛毒食品」に殺される』(扶桑社刊)など。最新刊『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』(扶桑社刊)発売
1980年、愛媛県生まれ。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国に渡り、医療や知的財産権関連の社会問題を中心に現地取材を行う。2008年に帰国後は、週刊誌や月刊誌などに寄稿しながら、「国家の政策や国際的事象が末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに地道な取材活動を行っている。2016年に他に先駆けて『週刊SPA!』誌上で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論の対象となり、健康保険法等の改正につながった。著書に『中国「猛毒食品」に殺される』(扶桑社刊)など。最新刊『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』(扶桑社刊)発売
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