なぜ中国は発売前のiPhone5のニセモノを作ることができたのか?
中国では8月、あろうことか“ニセモノiPhone5”が発売され、世界的なニュースになった。話を聞きつけ、小誌は広東省深セン市にある「華強北路」に向かい購入を試みのだが、その際「これ、パチモンでしょ?」と訪ねると、悪びれる様子もなく、店員は答えた。
「そうよ。でもデザインと寸法はiPhone5と寸分違わず同じだよ。これ持ってれば自慢できるよ」
「デザインも寸法も一緒」という店員の言葉にもあるように、中国の模倣品メーカーは、なぜ未発売製品の模倣品を作ることができるのか。その秘密を、中国にある調査会社、アライジェンス・コンサルタンツ代表の太田基寛氏が語る。
「iPhoneをはじめ、アップル社の製品の多くは、委託製造会社の台湾フォックスコン社の中国工場で組み立てられています。そこから発売前の設計図の一部が流出した可能性があります。中国では、正規品メーカーの中国工場の従業員が、小遣い稼ぎに山寨(パチモン)メーカーに設計図を提供するという例が後を絶ちません。山寨だけでなく、液晶保護シールやケースなども、正規品の発売前に製造されていますよ」
昨年8月にはアップルのグローバル・サプライマネジャーが情報漏えいでFBIに逮捕される事件も起こっているが、本社社員や末端の工員に至るまで、カネ欲しさに中国企業などに情報を流しているのだ。世界中で生産されるアップル製品のアクセサリーや周辺機器の9割以上は中国で製造されており、アップル人気が世界中で高まると同時に、こうした関連産業も多いに潤っている。
一方、模倣されるのは端末だけではない。7月、雲南省昆明市の「偽アップルストア」が世界的なニュースとなったのは記憶に新しい。海外メディアの報道を受け、市内計5か所の偽ストアを摘発し、一件落着したかに見えた。
しかし、昆明市から約800km離れた四川省成都市で、多くの偽ストアが堂々と営業していた。情報を聞きつけ、現地へと向かうと、繁華街でいとも簡単に「Apple Store」と掲げた店舗が見つかった。中に入ると、本家と同じ青いTシャツの店員たちがいるではないか。ここで我々は女性店員に「ここは本物のアップルストア?」と尋ねてみた。すると、「当然です」と、世界的企業で働くことの誇りさえ漂う口調で即答されたのだった。
【太田基寛氏】
中国・広州市にあるアライジェンス・コンサルタンツ代表。主に日系企業を顧客に、中国市場での模倣品実態調査やビジネス調査を行う。
ota@alligence.jp
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