雑学

歴史と伝統の全日本プロレス『世界最強タッグ』――「フミ斎藤のプロレス講座」第16回

『世界最強タッグ』はちょうどいまごろの季節を表すニッポンのプロレス文化の“季語”である。全日本プロレスの『2014世界最強タッグ決定リーグ戦』(11・16後楽園ホール~12・6大阪ボディーメーカーコロシアム=全11戦)が開幕した。公式リーグ戦には全8チームがエントリーし、ラウンドロビン(総当たり式=全28試合)で優勝を争う。

2014世界最強タッグ決定リーグ戦

全日本プロレス公式サイトより

 諏訪魔&ジョー・ドーリング(Evolution=前年度優勝チーム)
 秋山準&大森隆男(ワイルドバーニング)
 潮崎豪&宮原健斗(Xceed)
 曙&吉江豊
 KENSO&長井満也(ダークキングダム)
 ゼウス&The Bodyguard(ザ・ビッグガンズ)
 真霜拳號&タンク永井(凶月/K-DOJO)
 青木篤志&佐藤光留(Evolution)


 公式リーグ戦はすべてPWFルールによる30分1本勝負で、優勝決定戦のみ時間無制限1本勝負。各ポイントは勝ち(反則勝ちも)=2点、負け=0点、時間切れ引き分け=1点で、両軍リングアウト・両軍反則・無効試合はすべて0点。12・6大阪大会の公式リーグ戦終了時に得点1位と同2位のチームによって優勝決定戦がおこなわれる。ことしは世界タッグ王者の秋山&大森がリーグ戦開幕をまえに同王座を返上。『世界最強タッグ』リーグ戦優勝チームが改めて“第68代”世界タッグ王者に認定されることとなった。

『2014世界最強タッグ』開幕戦、11・16後楽園ホール大会では公式リーグ戦4試合がラインナップされ、優勝候補2チームの直接対決となった諏訪魔&ドーリング対秋山&大森の一戦は、ドーリングが大森をフォール(得点2)。潮崎&宮原対青木&佐藤は30分時間切れのドロー(両チーム得点1)。初出場チームのゼウス&The Bodyguardが曙&吉江(ゼウスが吉江をフォール)を、真霜&永井がKENSO&長井(真霜がKENSOをフォール)をそれぞれ下した公式戦2試合はちょっとした“番狂わせ”だった。

 ことしの『世界最強タッグ』出場全8チームの編成は、諏訪魔&ドーリング、秋山&大森、潮崎&宮原、ジュニアヘビー級の青木&佐藤の4チームが定番コンビで、曙(全日本)&吉江(フリー)とKENSO(全日本)&長井(ドラディション)の2チームは混成コンビ、真霜&T・永井は千葉のKAIENTAI-DOJO所属の若手チームで、ゼウス&The Bodyguardは関西エリアを活動拠点とするフリーのタッグチームだ。

「(秋山&大森は)先制攻撃、仕掛けてきやがって。あんなガサツなプロレスでオレらの暴力的なプロレスにかなうわけねえだろ。オレは積み上げて、積み上げて、これ以上ないというサイコーのプロレスをやる。歴史に名を残す!それだけ!!」(諏訪魔)

「オレたちが世界でイチバンのタッグチームだ。だれもオレたちを止めることはできない。だれもラストライド、エボルーション・ボムを返すことはできない。We are the best tagteam in the world. We are unstoppable. Nobody gets up from the Last Ride, Nobody gets up from the Evolution Bomb!」(ドーリング)

 諏訪魔の「歴史に名を残す!」という短いコメントにはこのタッグリーグ戦の権威とその重みがストレートに集約されている。1978年(昭和53年)の第1回大会から数えてことしで37回めの開催となる『世界最強タッグ』は、日本のプロレス界だけでなく世界でも類をみない、途切れることのない系譜に支えられた歴史と伝統のイベントである。

 シリーズ開幕戦にはドリー・ファンク・ジュニアPWF会長がウィットネスとして来日。ドリー自身も“現役レスラー”としてベテランの渕正信とタッグを組み、前座の第2試合で西村修&SUSHIと対戦した。73歳のドリーは序盤戦から西村の胸板におもしろいようにエルボースマッシュを打ち込み、グラウンドの体勢では“伝家の宝刀”スピニング・トーホールドを大回転させ、試合開始から10分経過の時点ではいにしえのダブルアーム・スープレックスで“まな弟子”をふんわりと宙に舞わせた。

 オーソドックスなロックアップ(カラー・アンド・エルボー・タイアップ)からサイドヘッドロック-左回りのハンマーロック-左からリストロックへとつながるチェーン・レスリングの動き、リング上を時計と逆方向にまわりつづける“円の舞い”は幻想的で、スピニング・トーホールドやダブルアーム・スープレックスをすいすいとキメていくタイミングはまるで魔法のようだった。プロレスのなかにスポーツとしてのリアリティーや競技性、アスリートとしての身体能力ばかりを求めてしまうと、ドリーのようなスタイルのプロレスの芸術性はなかなか理解できないかもしれない。

⇒【後編】に続く https://nikkan-spa.jp/751937

文責/斎藤文彦 イラスト/おはつ

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※このコラムは毎週更新します。次回は、11月26~27日頃に掲載予定!





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