「イスラム国」の影響を受けたローンウルフ型テロの脅威
2月1日午前5時すぎ、過激組織「イスラム国」に人質として拘束されていた後藤健二さんの殺害動画が公開された。日本を、そして世界の注目を集めた日本人人質事件は、人質2名の殺害という、最悪の結末でいったん、幕を閉じてしまった。
だが、動画で「イスラム国」の覆面の男(英国出身の「ジーディ・ジョン」と呼ばれる男と思われる)が発した「今後も日本国民はどこにいても殺される」という脅し文句は、単なるこけおどしなのか、それとも警戒に足るべきものなのか?
実際に、カナダやオーストラリア、フランスでは「イスラム国」の影響を受けたと思われる人物によるテロが相次いでいる。こうしたテロは今後も連鎖するのか? 『イスラム国の正体』(ベスト新書)の著書があり、イスラム過激派に詳しい軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏に聞いた。
「かつてのアルカイダのように、組織がメンバーを現地国に派遣し、スリーパー・セル(潜伏工作員)として時間をかけてテロ作戦を準備するタイプの本格的なテロは、各国の治安当局の努力によってかなり難しくなってきています。その代わりに急増しているのが、テロ組織を支持する個人、または少人数の仲間内グループによるテロです。組織とは直接は接触せず、独自に計画して実行する。これは専門用語で“ローンウルフ(一匹狼)型テロ”と言うのですが、欧米でも今もっとも警戒されています。実際、13年のボストンマラソン爆弾テロなど、近年の欧米のテロ事件はほとんどこれです」
ローンウルフ型のテロリストは、どこの国にもおり、従来の過激派組織と接点がないので、治安当局としては把握のしようがない。
「ローンウルフ型テロは規模が小さくなりがちですが、それでも危険なことに変わりない。テロは似たスタイルのものが伝播して一時的に流行することが多く、今は世界中でローンウルフ型のテロが起きやすい状況といえます」
テロの連鎖は日本をも襲うのか。日本人も今、警戒すべき時だ。 <取材・文/週刊SPA!編集部>
【黒井文太郎氏】
‘63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、軍事ジャーナリストに。著書に『イスラムのテロリスト』(講談社+α新書)など多数
※2/3発売の週刊SPA!では「日本の重要施設を「イスラム国」が狙っている!」という特集を掲載中。
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