日本国民の税金が「テロに使われている」…パレスチナへの支援金“2,400億円”の行方とは
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム過激派テロ組織「ハマス」が突如イスラエルを攻撃。軍事衝突が激しさを増すなかで、双方の死者は2800人を超えた(13日時点)。
これまでにもイスラエル・パレスチナ間の紛争には多くの一般市民が巻き込まれており、日本政府はパレスチナに対して2400億円以上もの支援を行ってきた。
しかし、そのお金がテロ支援や汚職に使われた可能性があると、イスラム思想研究者の飯山陽氏は指摘する。
中東問題再考』(育鵬社刊)の一部を抜粋・再構成したものです。※肩書は当時のもの>
スウェーデンのアン・リンデ外相は2021年10月、スウェーデン公共放送に対し、「(パレスチナの)経済発展を完全に支援できるようになるには、もちろんパレスチナにあるようなレベルの汚職があってはならない」と述べました。
スウェーデン政府は2020年から2024年の間に、パレスチナに対して約1億8000万ドルの開発援助の割り当てを予定しており、それに加えて欧州連合(EU)を通じてパレスチナ自治政府(PA)に数百万ドルの直接予算支援を行っています。
リンデ外相の発言は、PAの汚職を理由に経済支援継続に対する躊躇を示したものです。
しかしスウェーデンや、テイラー・フォース法を成立させた米国とは異なり、日本には、日本国民の税金がパレスチナに渡りテロ支援や汚職に使われるようなことがあってはならない、と公の場で問題提起する議員もいなければ、これについて報じるメディアもありません。
ですから日本の対パレスチナ支援は、一般の人々にはそこに問題があること自体が知らされないまま、延々と続けられています。
2021年9月に外務省が公開した「我が国の対パレスチナ支援」という資料によると、1993年以降の日本の対パレスチナ支援の累計は21.5億ドル以上、日本円に換算すると2400億円以上にもなります。
「我が国による最近の支援」というところには、筆頭に「パレスチナ難民支援」が挙げられ、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)を通じて、パレスチナ難民に対して273万ドルの食糧支援の実施を決定、UNRWAを通じて「パレスチナ難民の子供のための質の高い包括的な教育に向けた学校における学習環境強化計画」に対して約900万ドルの支援を決定などと書かれています。
2020年3月に外務省が公開した「中東和平についての日本の立場」という文書にも、「パレスチナ難民の経済・社会生活を向上させる国際的取組に貢献するため、我が国は、UNRWAを通じたパレスチナ難民支援に引き続き努力していきたい」と書かれています。
2021年6月にも日本政府は、「イスラエルとパレスチナ武装勢力間の衝突により大きな被害を受けたガザ地区に対する支援」のため、ガザに1000万ドルの緊急無償資金協力を実施すると発表しました。うち530万ドルはUNRWAへの割り当てが決まっています。
このUNRWAという組織については、疑惑に満ちた非常に問題の多い組織であることが国際的に大きな問題となっています。
これも、日本のメディアがほとんど伝えないパレスチナの真実の一つです。
UNRWAは1949年、「パレスチナ難民の支援」を目的に設立された組織で、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の管轄下にあります。
約500万人のパレスチナ難民に種々のサービスを提供するのが任務で、職員は約3万人、年間予算は12億ドルです。
パレスチナ難民以外の世界の難民はすべてUNHCRが扱っており、その数はパレスチナ難民の6倍ですが、UNHCRの職員数はUNRWAの4分の1程度です。
UNRWA職員の数がこれほど多いのは、UNRWAが地方自治体などを通じて活動する他の国連機関とは異なり、パレスチナ難民に直接サービスを提供するという特異な形態をとっているためです。
UNRWA自体が独自の活動やプロジェクトを計画・実施し、学校や診療所などの施設を建設・運営しています。
現在UNRWAはガザ、西岸、ヨルダン、レバノン、シリアの五つの地域に支部を置き、合計900以上の施設を運営または支援しています。
<本記事は飯山陽著『パレスチナ支援へ流れた2400億円以上もの日本国民の税金
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の闇
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1976(昭和51)年東京生まれ。イスラム思想研究者。麗澤大学国際問題研究センター客員教授。上智大学文学部史学科卒。東京大学大学院人文社会系研究科アジア文化研究専攻イスラム学専門分野博士課程単位取得退学。博士(文学)。『ニューズウィーク日本版』、産経新聞などで連載中。著書に『中東問題再考』『イスラム教再考』(以上扶桑社新書)、『エジプトの空の下』(晶文社)など。
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