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安田純平氏への非難やまず…同胞の解放を“喜ばない”日本の自己責任論の異常さ――古谷経衡

― 連載「ニュースディープスロート」<文/古谷経衡> ―

’04年のイラク人質事件時よりも醜い日本の自己責任論


安田純平

7月にネット上で公開された拘束動画より

 シリアで3年以上拘束されていた安田純平氏が解放された。手放しで喜びたいニュースだ。危険を顧みずジャーナリスト魂を披瀝した安田氏は、国民的英雄として凱旋でもって迎えられるべきである。ところが、ネット世論ではまたぞろ安田氏への自己責任論が湧出している。いわく「自己責任と自分で言って危険地帯に行ったのだから安田を助ける必要はない」というもので、これまで’04年のイラク日本人3人人質事件、’15年の後藤健二氏誘拐殺害事件でも、繰り返しこの手の自己責任論は噴出してきた。

 しかし、仮に予め危険を知っていたとはいえ、同胞が危機を乗り越えて日本に帰国することを手放しで「喜ばない」国民がネット空間に少なくない国というのは、世界広しといえど日本くらいしかない。はっきり言って異常である。

 同胞意識、つまり同じ国民であるという国民国家の構成員という自覚がまるでない。「自分でやったことは自分で責任を取れ」というのなら、国民国家の存在理由はなくなり、共同体の最大単位は自警団でいいということになる。

 仮に被害者がアナーキストであっても国家は邦人救出の義務があるが、自己責任を叫ぶ連中にはこうした近代的自意識というものがない。まるで国家なき部族社会のようだ。それに飽き足らず、安田氏は拘束動画で「ウマル」と名乗り「私は韓国人です」と発言したことから、「安田はウマルという名前の在日朝鮮人」というデマさえ定着した感じがする。

 真相は安田氏が取材で「犯行グループに『韓国人だと言え』『本名を名乗るな』と言われ、それに従って『韓国人』、(イスラム教徒の名前である)『ウマル』と言った」と答えている。

 この自己責任論、現在世界で跳梁跋扈するネオリベの主張と瓜二つだ。要約すると「自分の稼いだカネが不道徳な他者を助けることに使われるのはけしからん」というもので、典型的なのがトランプ支持者の共和党ネオリベ層である。日本でも、安田氏解放と時を同じくして麻生太郎財務大臣が同じ世界観を開陳してはばからない。

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「不道徳な野郎に俺のカネを使うな」という感覚

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