「7000万円借金があるけど」新卒で入ったTBSを“突如退社”したディレクター。「自分の最低ラインを決めれば何をしてもいい」
TBSの社員時代に、深夜の街で暮らす人々をフィーチャーする番組『不夜城はなぜ回る』で現場に立ち向かう名物ディレクターとして注目を集めた大前プジョルジョ健太。
メディア業界で名誉とされる「ギャラクシー賞」を受賞し、TBSの未来を担うテレビマンと期待されていた彼だったが、昨年突如退社したことで周囲をざわつかせた。
そんな彼は現在、無職やアルバイト生活を経験し、危険な国境越えを試みる移民に密着するドキュメンタリー『国境デスロード』(ABEMA)を企画・総合演出し、取材まで務める番組で再び脚光を浴びている。
好奇心旺盛なイメージが強い彼が、テレビマンになった理由や退社に至るまでのエピソード、多額の借金事情、海外取材で感じた葛藤までを赤裸々に語ってくれた。
――TBSの入社を志した理由は?
大前プジョルジョ健太(以下、大前):元々は海外で働く仕事をしたかったんです。でも、一目惚れした同じ大学の女子がアナウンサーを目指していて、その子と近づくために同じゼミに入ったことが最初のきっかけですかね(笑)。
そこは映像制作をするゼミで、自分も映像を作っていくうちに徐々にのめり込んでいってマスコミへの就職を意識し始めました。
――恋愛がきっかけなんですね(笑)。テレビ局に入りたいと思ったのは?
大前:学生時代にお笑いや音楽を披露したり、花火を打ち上げたりする出張寄席グループに所属していて、東日本大震災の復興で東北に行っていたんです。
そのとき、仮設住宅に住む方々がテレビの話を楽しそうにしていたのが印象的で……。多くの人々に一斉に届かせられるメディアは「やっぱりテレビだな」と確信したことも大きいです。
――ちなみにTBSは第一志望だったんですか?
大前:はい。TBSにどうしても受かりたかったですね。
自由度の高い社風や報道に力を入れていることもありましたが、『万年B組ヒムケン先生』という個性的な若者を取り上げて彼らの本音に迫るという趣旨のバラエティー番組がすごく好きで、自分もこういう番組を作りたいと思っていたんです。
TBSは『学校へ行こう』もあったり、一般の方々をフィーチャーして密着するドキュメントタッチの番組が多い印象だったので、そういう番組を作るチャンスがある局だと思っていました。
――見事、難関倍率のTBSに入社されましたが、最初はどんな仕事をされていたんですか?
大前:最初の配属は報道部でした。でも、当時同棲していた彼女が「テレビの報道は間違っている!」という考えを持っていて、家でテレビを見にくかったり、パソコンの検索エンジンを制限したりしていて。
もちろん、報道がもたらすマスコミの役割も信じていましたが、そういったマイノリティーな考え方を持つ人が何もかも間違っているわけではないなと板挟みになって……。悩むうちに元々やってみたかったバラエティー部に異動させてもらいました。
一目惚れがきっかけでテレビ局の就職を決意
憧れのTBSに入社し報道を経験
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