更新日:2022年06月22日 00:43
スポーツ

端整なルックスに飛び散る鮮血、若きデスマッチファイター正岡大介の素顔

プ女子ライター・尾崎ムギ子のプロレスレポート

若きデスマッチファイターの素顔 小学校のとき、図工の授業中、彫刻刀で親指を深く切ってしまったことがある。血がドバっと出て、咄嗟に手を机の下に隠した。先生もクラスメートも、誰も気づかない。私が指を切ったことも、痛くて仕方がないことも。  大人になってからも、「大丈夫?」と聞かれると「大丈夫」と言ってしまう。ほんとうは全然大丈夫じゃない。痛いって、言いたい。痛いって、分かってほしい。けれど、痛みや自分の弱さを人に見せるのは、恥ずかしいし、カッコ悪い。……なんだか、生きづらい。  しかし、いま、もし人前で指を切ったとしたら、「キャー! 血が! 血が出てる! どうしよう!」と、騒ぎ立てるかもなぁと思う。なぜなら、デスマッチの美しさを知ってしまったから。 ⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1009716
※【閲覧注意!】流血シーンが含まれます
◆デスマッチの新星 若きデスマッチファイターの素顔 若く、端整な顔立ちに、金髪と鮮血のコントラストが神秘的。冷たい眼差しに、心奪われる。何をしでかすか分からない。何かやってくれるのでは……? 客席の期待がゴクリと高まる。 「てめーは絶対、オレに勝てるって言えんのかよ」  正岡大介のデスマッチを初めて見たとき、血に染まったリングからそう聞こえた気がした。 『SLAMDUNK』の主人公・桜木花道が、ライバルである流川楓に1 on 1 を挑んだ際のセリフ。経験もポテンシャルも周囲の期待も、何もかも流川には敵わない。案の定、桜木は完敗する。しかし読者は共感せずにはいられない。だって誰もが、誰かに対して思っているではないか、「てめーは絶対、オレに勝てるって言えんのかよ」――。 若きデスマッチファイターの素顔 11月23日、FREEDOMS横浜ラジアント大会。葛西純との蛍光灯デスマッチに敗れ、正岡はトレードマークの金髪を自らバリカンで刈り落とした。  “デスマッチのカリスマ”、葛西純。そのあまりの存在のデカさに、他のデスマッチファイターは霞む。刃向う者もいない。しかし、昨年デスマッチデビューしたばかりの正岡大介は言うのだ。「お前らの首、刈ってやる」――そう言って、蛍光灯の束をパシャンと割り、自らの額にあて、端から端までを、えぐる。  血が……額からピューピューと、無機質な噴水のように、放たれる。  思わず私は、リングに向かって手を合わせた。……勝ってくれ。カリスマを、超えてくれ。 ◆「笑っちゃうんです、デスマッチ」  12月10日、試合開始の3時間前、新木場1stRINGの扉を開けると、正岡はリングの上に立っていた。「掃除機かけまァーす!」そう元気よく、リングの上を一人、掃除機片手に走り回る。 「一人だけいますよ まだ元気な奴が」  またしても、『SLAMDUNK』のセリフがよぎる。桜木花道の赤い髪と、正岡大介の赤い血がオーバーラップする。やんちゃで無鉄砲で、賭けてみたくなるキャラクターだ。  この日のメインイベントは、「カミソリ十字架ボードデスマッチ」。FREEDOMS代表・佐々木貴とタッグを組む。対戦相手は、葛西純と吹本賢児。正岡は入団一年余りで、FREEDOMSのメインを飾るデスマッチファイターになった。  話を聞きたいと言うと、ツルツルに丸めた頭をなでながら、きまり悪そうに応じてくれた。金髪にしたのは2年前、デスマッチをやると決めたとき。以来、ずっと金髪……だった。 若きデスマッチファイターの素顔「試合に負けて髪を切ったのは……やっぱり悔しかったですけど。デスマッチのカリスマと19分57秒、試合ができたっていう充実感はありました。髪はまた伸びるので、また何度でも挑戦したいです」  プロレスデビューは2004年。デスマッチ戦線に加わったのは、2014年8月。それまでは通常ルールのプロレスをやっていた。デスマッチは、他の試合とどう違うのだろうか。 「途中から、ヘンなスイッチ入るんですよ。なんか……笑っちゃうんです」  ああ、そうだ、正岡は試合中、笑うのだ。血まみれの顔から、白い歯がニヤリと浮かび上がる。あるとき、観客に言われたのだという。「正岡くん、狂ってきたねえ」 「なんのことだろう、と思いました。そしたら、『試合中、笑ってるよ』と言われて。写真を見たら、ほんとに笑ってました」 若きデスマッチファイターの素顔 次回の後編「凶器との出会い」は、正岡の得意アイテムが「画びょう」になった理由。乞うご期待! ●FREEDOMS公式サイト:http://pw-freedoms.co.jp/ ●『Blood X´mas 2015』12月25日(金) 後楽園ホール <取材・文/尾崎ムギ子 撮影/安井信介>
尾崎ムギ子/ライター、編集者。リクルート、編集プロダクションを経て、フリー。2015年1月、“飯伏幸太vsヨシヒコ戦”の動画をきっかけにプロレスにのめり込む。初代タイガーマスクこと佐山サトルを応援する「佐山女子会(@sayama_joshi)」発起人。Twitter:@ozaki_mugiko
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