投げ捨てられた猫が、古本屋の猫店長として就職するまで
埼玉県のとある古本屋に日がな一日、本の上で過ごしている1匹の猫がいる。古本屋といえば店の奥に店主のおじいちゃんが座っているというイメージがあるが、この古本屋は少し違う。店番の女性が軒先に立ち続け、その隣では猫がゴロゴロとノドを鳴らしている。堂々とした様はさながら“猫店長”のようだ。ときおり客が訪れては、近寄ってスリスリと“接客”している。
そんな姿が気になり店番の女性に話をうかがってみた。猫店長が古本屋に“就職”するに至った意外なワケとは?
この古本屋、中に入ってみると本の量はかなり多いにも関わらず、歩くスペースは2畳ほどしかない。至る所に本が敷き詰められてはいるが、近くに行けないので手も届かないし、遠すぎて題名さえ見えない本もある。
「昔は軒先にも本をたくさん並べておいたんだけどね、市の合併にともなってルールが変わっちゃったのよ。だから、店の前に置いていた本のカートをそのまま中に入れるしかなかったの」
そんな状況で果たして売れるのだろうか……しかし、本棚を見てみるとなかなか珍しそうな本がたくさんある。まだネットが普及していなかった時代の成人雑誌などマニアからすればかなり価値がありそうだ。掘り出し物を探しにくるバイヤー(転売屋)もちらほらと訪れるという。
「バイヤーじゃなくて、本当にその本を読みたい人に買ってもらいたいけどね。探している本があれば意地でも私はこの山の中から見つけ出しますよ。言ってもらえれば在庫があるかどうかはなんとなく分かるの」
本棚はもう迷宮みたいになっていて、これはこれでカッコいい。そして猫店長もこの迷宮空間がお気に入りのようだ。
本の上を移動しながら筆者のもとへやってきた猫店長。かなり人懐っこいらしく、客が来ると必ずといっていいほど軒先にやってくる。本の上で寝ている猫店長に客がカメラを構えシャッターを切ろうとすると、本から降りてスリスリと身体を擦り付けてくる。
「みんな写真を撮ってくれるんだけどね。この子、人が来るとすぐ近寄って行っちゃうの。本の上にいる姿が人気なんだけどシャッター時間はかなり短めなの」
店番の女性と話している間も何人かお客さんが来たが、みんなにスリスリしている猫店長。その客が帰るとまた筆者のもとに来るくらいなので相当な甘えん坊である。
迷宮のように本が山積みとなった店内
商売上手の猫店長
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