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東京五輪を2500円〜で観られて、メダル確実の穴場競技を発見した

~今から始める2020年東京五輪“観戦穴場競技”探訪 第65回~  フモフモ編集長と申します。僕は普段、スポーツ観戦記をつづった「スポーツ見るもの語る者~フモフモコラム」というブログを運営しているスポーツ好きブロガーです。2012年のロンドン五輪の際には『自由すぎるオリンピック観戦術』なる著書を刊行するなど、知っている人は知っている(※知らない人は知らない)存在です。今回は日刊SPA!にお邪魔しまして、新たなスポーツ観戦の旅に出ることにしました。  東京五輪・パラリンピックの現地観戦を目指すにあたり、いいニュースと悪いニュースが発表されました。いいニュースはチケットの価格です。組織委員会の発表ではチケットの価格は非常に抑え目であり、開会式でも12000円から30万円、多くの競技で3000円前後からのスタートという手の出しやすい設定になっています。これはチケットを買う身としては財布に優しいグッドニュースです。  と同時に、その価格は悪いニュースでもあります。とにかくどうしても現地の空気を吸うために不人気そうな穴場を探しているくらいなのに、チケットの価格を抑えられたら「その値段なら見たいなぁ、近代五種でもいいや」と無関心層が思っちゃうじゃないですか。「ボランティアにお金を払わず、チケット代も安く抑える」というデフレ一直線の運営であることに組織委員会は気づいているのでしょうか。チケット代を高くしてボランティアにもお金を払えば、働く人は嬉しいし、どうしても見たい人は競争率を抑えられてみんなハッピーなのに。

チケットの価格設定が穴場発見の目安になる!

 価格を見ていくと、「この競技は人気ないだろうなぁ」というところが的確に安くなっているあたりは、割り切った露骨さと言ってもいいかもしれません。最有力穴場・近代五種のチケット代が最安で 2500円、最高でも4000円という「全競技中最安設定」となっているのは、コッチも「不人気な穴場」を探している身として共感しかありませんが、それを組織委員会が言っちゃダメだと思うのです。人気を的確に相場に反映させたら、不人気目当ての人が集まっちゃうじゃないですか。  近代五種が「五種だけに5万円スタートです」とかだったら絶対売り切りなんてなかったのに! ていうか、関係者パスで入る選手と役員以外誰も行かなかったのに!  しかし、ハタと気づきます。もしや、この値段設定から逆に穴場が見つけられるのではないかと。組織委員会が「不人気そうなヤツは安くしとこう……」というマインドであるなら、安い設定のところは空いている見込みがあるということ。発表されたチケット価格帯を見ると、近代五種以外にも最安となる2500円スタートの競技がいくつかあります。ホッケー、射撃、ウェイトリフティング、そしてソフトボール。ほほぉ、ソフトボール。  そう言えば、ソフトボールはまだ当連載でも採り上げていませんでした。北京五輪では金メダルを獲ったし、日本は野球大国だし、穴場になるなんてイメージはありませんでしたから。もしもソフトボールが密かな穴場であるならば、これは素晴らしいことです。日本代表はメダルが確実、金メダルも十分あり得る強豪です。穴場優先と言えど、できればメダルが見たいし、君が代が聞きたいのは当たり前。一度、実態というのを確認せねばなりません。

ということで、やってきたのは千葉マリンスタジアム

メダル確実でも千葉ロッテほどの集客力もないソフトボール

 何と都合のいいタイミングであることか、五輪を控えた2018年、ソフトボールの世界選手権が日本で開催されていたのです。日本代表はレジェンド・上野由岐子さんらを中心に順調に勝ち上がり、準決勝まで進出していました。この日は、準決勝でカナダと戦い、そこに勝てば決勝では宿敵アメリカと戦うという日程。日本VSアメリカという黄金カードが、世界選手権決勝という舞台で行なわれる。ハッキリ言って、これ以上の設定は東京五輪の決勝戦以外ありません。これ以上はないという穴場の上限を見極める舞台となるでしょう。

運営のやる気は十分! 最寄駅前には上野さんの「ちょっと何言ってるのかわからない」系の顔出し看板も

たくさんの人がメッセージを書き込んだ応援カーも展示

日本代表のユニフォームが発売され、たくさんの人が買い求めていました

当日券を求める人の列も伸びる

 現地はとても活気があり、物販なども盛り上がっています。特にユニフォームの販売には女子ファンを中心に多くの人が詰めかけ、サッカー日本代表の試合のようにユニフォーム姿での観戦というスタイルも定着しているようです。これは穴場競技ではなかなか見られない光景です。セーリング会場にいるセーリング日本代表のウェアを着た人は全員選手ですし、フェンシング会場でフェンシングの防具をつけている人は全員剣士です。ていうか、穴場競技で見かける人の大半は、「選手」「選手の家族」「選手の指導者」ですから。  客層にはある種の傾向を感じます。野球場にいそうなオッサンの割合は低く、中学生から大学生くらいの女子がとても多い。スタイルはボーイッシュで爽やかなショートカットの娘が多く、部活でソフトボールをやっていそうな雰囲気も。そんな彼女たちが集団で訪れ、思い思いの応援グッズを手に黄色い歓声をあげる……そんな空間です。昔で言うクラッシュギャルズのような、女の子のヒーローとしてソフトボール選手は見られているのかもしれません。  とは言え、想定したほどの人気ぶりではありません。前々日の段階で「どっちみちこの日、日本の試合がある」ことは大会の仕組み上わかっていたのです。わかっていたのに全部のチケットが前売りでなくなるようなことはありませんでした。そして当日券も大混乱とまではいかず、並べばすぐに買える程度の列です。「五輪を除けばソフトボール界最高の舞台設定でも千葉マリンが埋まらない」というのは穴場探しにとっては朗報です。千葉ロッテでさえたまに満員にする球場を、最高の設定でも埋められないなら、本番も期待が持てるに違いありません。

いざ球場入りすると準決勝のスタンドは5割くらいの入り

決勝でも6割くらいの入り、ちなみに外野スタンドはそもそも開放されていません

プロ野球なら不入りと言われるくらいの見た目

 ヨシ、やっぱり埋まらなかった。  客数自体はそれなりに多く、千葉マリンスタジアムの収容人数が約3万人であることを考えると、1万5000から2万人くらいはいたと思われますが、逆に言えば現時点での最大人数がそのくらいであるということです。過去には東京ドームで行なわれた日米対抗戦が約3万人の観客を集めたそうですが、それはソフトボールの歴史のなかでも最大の観客数だったのではないかと言われるほどの大入りだったといいます。つまりマックス3万人。マックス3万人の競技ならば、本番でも十分に可能性はあるでしょう。

誓いの円陣で試合開始

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“神試合”からあらためて感じたソフトボールの魅力
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