― 連載「ドン・キホーテのピアス」＜文／鴻上尚史＞ ― 　故郷の秋祭りに帰って、ノンキな時間を過ごしました。僕が勝手に言っている「日本三大荒くれ祭」のひとつ、「新居浜太鼓祭り」です。

日本三大荒くれ祭りと、ぼくが勝手に言っている新居浜太鼓祭りをのぞいてきました。今日が最終日です。高さ5.5メートル、長さ１２メートル、150人から200人で担ぐ太鼓台です。 pic.twitter.com/kmfE7WF5O9

— 鴻上尚史 (@KOKAMIShoji) 2018年10月18日

　高さ5.5メートル、長さ12メートル、約3トンの太鼓台を150人から200人の男達がかき上げます。かき棒の太さは、電信柱ぐらいあります。まあ、巨大な御神輿だと思ってもらえると見たことのない人も想像できるでしょう。 　この祭のことは、この連載で何回か書きました。今回は、一日だけ、山根グラウンドという場所に行きました。太鼓台が20台集まり、いろいろとかきくらべをしてくれるのです。 　途中で、地元新居浜を舞台にした映画の主演男優と監督が挨拶をしていました。主演男優は、じつに気さくなスピーチで、たぶん、1万人以上はいるだろう観客を沸かせていました。監督もじつに誠実に、内容を語っていました。 　観客の中に、「お、もうすぐ公開なのか。じゃあ、ちょっと見てみるかなあ」といういいムードが流れて挨拶が終わりました。 　と、アナウンスの女性が「皆様にお願いです。主演の〇〇さんを撮った写真は、SNSに投稿しないで下さい」と告げました。観客に小さなどよめきが起きました。 　たたみかけるように「なお、監督の△△さんの写真はSNSに投稿してもオッケーです」というアナウンスが続きました。 　今度は、小さな失笑が漏れました。 　僕は、ぐわっと1万人近くいる（公称だとのべ3万5千人だそうです）群衆の中にいました。 　主演俳優に関するアナウンスが流れた途端、周りから「なんでダメなんぞ。気取っとるのか」という、舌打ちのような呟きが何人かから聞こえてきました。