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モノが多様化すればするほど、貨幣の価値は下がっていく<プロ奢ラレヤー>

プロ奢ラレヤー(@taichinakaj)

「僕に奢りたい人はDM(ダイレクトメッセージ)ください」―― “「他人のカネで生きていく」というモットーを掲げ、見ず知らずの人に奢られることを生業”とする、「プロ奢ラレヤー」。  Twitter上でつぶやく日々の気づきや、奢りに来た人の奇想天外なエピソードが反響を呼び、フォロワーは2年半で約9万人。彼に奢った人は政治家、医師、経営者、研究者、芸能人、パパ活女子、前科持ちなど各界各層2000人以上となり、インターネット上の話題をつねにさらっている。  なぜ人々は奢ってまでも彼に会いにいくのか? 彼の唯一無二の「奢られ活動」の原点を記した著書「嫌なこと、全部やめても生きられる」が12月20日に発売された。  その中から、いくつかお届けする。

「お金の価値が下がっていく」は本当?

 最近は「お金の価値が下がってきている!」「これからドンドンお金の価値は下がっていく!」なんて話をよく聞きます。これ、ホントなんでしょうか? ここで「お金の価値ってホントに下がる?」という問いに対する僕の考えをストレートに言ってしまうと、「食い気味のYES」です。  なぜお金の価値は下がるのか。  大前提として、「通貨」というものは「一般受容性があるか」で通貨になり得るかがおおよそ決まると言えます。いま通貨と言われて思い浮かべるのは「お札」「コイン」などですが、少し前の時代には「米」が通貨として扱われていました。どうして米が通貨になりえたのか。それは「一般的に考えて、価値があるもの」だったからです。  かつての農業社会においては「米」というのは食料であり、保存も効くわけで、「いくら持っていても良く、あればあるだけ役に立つもの」と言えます。なので、一般受容性(広く人々に受け入れられているもの)があり、通貨として使われたわけです。近代のお金も同じです。隣の人にあげたらだいたい喜ばれます。米と圧倒的に違うのは「軽くて、持ち運びに便利」という点でしょう。  誰が見ても価値がある物は通貨になり得る。現代で貨幣が通貨となっているのは、軽くて持ち運びが便利な上にほとんどのものと交換できるからに過ぎません。しかしそんな便利なお金の価値がどうして下がってしまう、と考えられるのか。その背景には「トレード」が、現代社会では非常に適用しやすくなっていることが考えられます。  昔の村社会で物々交換が成立していたのは「商品の種類が少なかった」つまりダイバーシティではなかったからです。「りんご10個と米1キロを交換」「バナナ20個と米1キロを交換」といった具合に決められていたルールは、商品の種類が増えれば増えるほどややこしくなり、通用しなくなってしまいます。そこで「あれ? これ米1キロを基準にしたらわかりやすいんじゃね?」と気付いたから、米は通貨になったわけです。物々交換とはポケモンでいう「トレード」です。  ポケモンでは、「自分のポケモンと友達のポケモンを交換する」ことができます。ポケモンの世界では通貨を用いてポケモンを買うことはできず、あくまで物々交換が基本になります。僕は22歳なので、ちょうどルビーサファイア世代。当時のポケモンは「通信ケーブル」というものでしか通信対戦ができず、直接会っている人としか通信ができませんでした。そうなると、通信できる「隣の人」が限られてくるので、結果的にトレードで貰うことのできるポケモンも少なくなります。  この状態を、「ネットワークが弱い」としましょう。  さて。では「ネットワークが強い」状態とはどういう状態か。それが「オンライン通信」が可能になった最近のポケモンです。Wi-Fiに繋いで、目の前にいない人と通信ができる。この「ネットワークが強い」状態になると、「ネットワークが弱い」状態においてはわずかしかいなかった「隣の人」が実質無限大になります。なんなら、海外のプレイヤーとトレードして「英語版ピカチュウ」を手に入れることだってできちゃいます。  一般的に「自分が欲しいもの、自分か提供できるもの」の種類がたくさんあるほど、物々交換はめんどくさくなりますが、ネットワークが強ければ、話は変わってきます。つまり「あれが欲しい、僕はこれをあげるから」というパターンが無限にどんな遠い距離の人ともできる世界では、トレードの間に一度通貨を挟まなくても物々交換的にトレードが成立する、というわけです。  ポケモンの世界には経済が存在しないので少し想像しづらいかもしれませんが、もし仮に「ミルタンク(牛のポケモン)を1000匹買うと牧場を経営できる」とすれば、おそらく「ミルタンク何万匹と(最強ポケモンである)ミュウツーを交換しよう」なんて端から見るとめちゃくちゃな条件も発生し、どこかで成立し続けると思われます。ネットワークが強くなった世界では通貨を介さずとも、比較的スムーズに各々の希望条件にあったトレードをすることができるので、物々交換が機能しやすくなるのです。
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欲しいものが多様化するとやがてお金が必要なくなる!?
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本名、中島太一。23歳。「他人のカネで生きていく」をモットーにツイッターを介して出会ったさまざまな人に「奢られる」という活動をし、現在フォロワー約9.8万人。奢ってくれた人々との邂逅を綴った「奢ログ」を含む日々の考察を有料note「プロ奢ラレヤーのツイッターでは言えない話。」として配信中。著書『嫌なこと、全部やめても生きられる』(扶桑社刊)、『プロ奢ラレヤーのあきらめ戦略』(祥伝社)。
嫌なこと、全部やめても生きられる

「逃げたら負け」と思っている人々へ。"目からウロコの意識低すぎ実践哲学"

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